<巨人2-1中日>◇2日◇東京ドーム

 巨人長野久義外野手(26)が、一振りで崖っぷちのチームを救った。同点で迎えた8回裏2死から、左翼席2階のバルコニーまで運ぶ決勝の8号ソロを放った。前日1日の逆転負けで、球団史の中でV率0%の借金7に突入していたチームにとって大きな1勝。今季、連敗を脱出する試合では打率5割7分1厘、3本塁打、4度の勝利打点と強さを発揮している。困った時に頼れる男の活躍で、今度こそ浮上できるか?

 巨人を覆っていた暗雲を、長野が一振りで吹き飛ばした。3打数無安打で迎えた中日チェンとの4度目の対決。「真っすぐが速いので負けないように。何とか塁に出よう」と打席に入ると、2球目を迷わず振り抜いた。打球は左翼席2階のバルコニーまで飛んだ。自ら「びっくりしました」と驚くほどの特大8号ソロが決勝点になった。「良かったです」。短い言葉に喜びを込めた。

 連敗を止める男だ。巨人の連敗は今季8度あるが、ストップした試合では28打数16安打3本塁打、5割7分1厘の高打率で、勝利打点も半数の4を数える。チームの苦境で、その存在はさらに際立つ。

 その理由は何なのか。プロ2年目で早くもクリーンアップの一角を担うなど実力はさることながら、若さにも見いだす。失敗を恐れず突き進めるのが若さの特権。「去年は何も分からない状態でやっていたので、1年やってみて少しは余裕を感じます」と、良い意味でのずぶとさもある。

 若さは勢いを生む半面、時に凡ミスを生む。ご多分に漏れず、長野も評価の裏返しとして「論ずるに値しない」「勝負どころでストライクを振ることもできない。ボール球はベーブ・ルースだって打てない」など、原監督から名指しの批判も受けた。だが、翌日には何事もなかったかのようにいつも通りの表情で試合に臨み、安打を放った。交流戦期間中には「気分転換です」と、阿部のバットで打撃練習を行うこともあった。また、交流戦を終えるとスパイクを新調し、心機一転、足元を固めてリーグ戦再開に臨んでいた。新人王翌年の2年目のジンクスなんて、どこ吹く風。気持ちをコントロールできる、たくましい精神力がある。

 ダルビッシュにも認められた男だ。6月30日、ファン投票で選出された絶対的エースが、会見で対戦を希望する選手として1人だけ名前を挙げた。その日の試合後に伝え聞くと「本当ですか?

 すごいうれしいです。交流戦でも対戦したことがないんです。素晴らしい投手であることは間違いないので、対戦してみたいです」と、引き分けで曇りがちだった表情が、このときばかりは輝いた。

 それでも「チャンスで打ててないですし、得点圏打率も低かったりする。(課題は)そこだと思います。まだまだ首位打者なんて言える立場ではないと思います」と、自らの好調ぶりにはいまだ無関心。「昨日ああいう負け(9回2死から大逆転負け)をしたので、今日は何とか勝ちたかった。勝てて良かった」と勝利第一主義を口にした。帰り際には、念を押すように「全然、打ててないですよ」と真顔で言った。苦境の中にいる巨人には、はつらつとぶれずに突き進んでいく長野の存在が、ますます不可欠となる。【浜本卓也】