<西武0-2ロッテ>◇4日◇西武ドーム

 ロッテの勢いが止まらない。西武に快勝し、球団としては60年ぶりに開幕4連勝を飾った。原動力の1つがドラフト4位入団の新人・益田直也投手(22)。抑えの薮田ともに4戦すべてに登板し、オール無失点。140キロ台後半の速球を軸に、この日も8回の1イニングを2三振含む3人、13球で片付け、無失点リレーに貢献した。昨年最下位に沈んだロッテが、2年前のように再び「下克上」を起こそうとしている。

 顔には出さなかったが、益田は8回のマウンドに焦りを感じながら向かった。ブルペンではスライダーが決まらない。登板直前の投球練習もあっという間に終わりそうだった。「初めての1点差の8回で、自分自身焦っていたんです。そしたら西本コーチから、間を取って投げろって言われて。今日は、あのひと言で助かりました」。大きく間をとって投球練習の最後の1球を投げると、いつもの頼もしい益田に戻った。スライダーはコーナーに決まり、145キロの直球はバットを押し込んだ。長打のある浅村、高山を連続三振。代打上本も中飛に仕留め、3者凡退で切り抜けた。

 60年ぶり開幕4連勝のキーマンだ。4試合すべてに投げ、無失点で切り抜けた。オープン戦も登板した8試合はすべて無失点で、プロ入り後、対外試合の防御率0・00は、そのまま首脳陣の信頼につながっている。ロサの不調もあり、セットアッパーを任されるようになったが、西村監督も「ルーキーとは思えないぐらいに見えてきた」と称賛する働きぶりだ。

 セットアッパーという舞台こそ、益田が思い描いていた仕事場だ。2月のキャンプインの時、西本投手コーチに持ち球や目標を書いたリポートを提出した。そこに益田が書いたのが「中日の浅尾さんのようになりたい」という目標だった。絶対的なセットアッパーとしてチームを優勝に導き、MVPを獲得する。まだ140試合残るものの、この4試合に限れば、思い描いたような活躍ができつつある。

 チームにとってだけでなく、フロントにとっても益田の存在は大きい。リリーフ陣では内や伊藤といった中継ぎエースが離脱。そればかりか、水面下で進めてきた外国人リリーフ投手の獲得も寸前のところでダメになってしまった。そういったピンチを救ったのが益田だった。そして成し遂げた60年ぶりの開幕4連勝。「そんなすごいことに自分が関われてうれしいです。おじいちゃんが70歳ぐらいなので、おじいちゃんが子供のころ以来ってことですもんね」。初々しさと頼もしさの同居したルーキーが、快進撃を支える。【竹内智信】<益田直也(ますだ・なおや)アラカルト>

 ◆生まれ

 1989年(平元)10月25日、和歌山県出身。

 ◆投手歴4年

 市和歌山商時代は遊撃手の控え。球速は123キロだった。甲子園出場なし。関西国際大1年時に投手に転向。3年時には最速148キロまで成長した。全国大会は09年大学選手権と09、10年明治神宮大会で登板。

 ◆消防士

 高校卒業時にはプロは夢のまた夢。大学へ進学し、消防士か警察官になろうと考えた。

 ◆器用

 スライダー、ツーシーム、カーブ、フォークと、球種は多彩だが、春季キャンプで西本コーチからシュートの握りを教わると、すぐにモノにした。直球の握りも縫い目に人さし指と中指を立てる独特な形。

 ◆サイズ

 177センチ、80キロ。右投げ右打ち。

 ▼ロッテがグライシンガー、益田、薮田のリレーで完封勝ちして開幕4連勝。ロッテの開幕4連勝は、毎日時代の52年に7連勝して以来、60年ぶり2度目だ。前回は開幕4試合のうち逆転勝ちが1試合あったが、今回は相手に1度もリードを許さずに4連勝した。この4試合の勝利投手は成瀬、唐川、藤岡、グライシンガーとすべて先発投手も、リリーフ陣の中でルーキー益田とストッパー薮田が4試合に登板、特に、益田はオール無失点の3ホールドと連勝に貢献。ドラフト制後、開幕戦からチーム4試合すべてに登板した新人投手は初めてとなった。