<ソフトバンク3-4巨人>◇6日◇福岡ヤフードーム
原巨人が、ついにセ・リーグの首位に立った。ソフトバンクに競り勝ち、昨年4月15日以来の首位。同点の9回、1死一、二塁で長野久義外野手(27)、坂本勇人内野手(23)が意表を突く重盗を成功させてチャンスメーク。直後に村田修一内野手(31)の犠飛で勝ち越して3連勝で貯金を10とした。統一球2年目。1発攻勢ではなく、「足」が最大の武器となりつつある。
塁上の長野、坂本。ベンチで陣取る原監督の視線が、マウンド上の森福の右ひざ一点に集中していた。同点に追い付かれた9回1死一、二塁。最後の攻撃だった。左腕を大きく回しセットに入る。案の定、その右ひざが高く上がった。
初球、ダブルスチール。長野のスタートが120点で、強肩細川でも三塁送球が出来ない。右足で二塁を刺す坂本のスライディングも申し分なかった。村田に1死二、三塁をお膳立てし、4番は犠飛で応えた。屈辱を受け止めきれない森福はベンチで涙目。今季チームはや3度目の重盗を、昨季日本一バッテリーにかました。
結果オーライ、の訳がなかった。原監督は「もう少し深い」とし、岡崎ヘッドは「成功する裏付けがなければ、ただの暴走」とした。森福は走者がいてもいなくても、右ひざをしっかり上げて投げる-。その特徴を、絶好の付け入るスキと捉えていた。
データだけで任務は遂行できない。ベンチの思惑と選手の走塁意識が高レベルで合致していた。「いいスタートが切れた」と長野。右ひざ死球で出塁するとあえて1度塁を離れ、ゆっくり足を屈伸させた。その上でじっくり、一定の間隔を刻むメトロノームのような森福のテンポを図った。四球の坂本も「重盗は頭に入っていた」。相手バッテリーはストライクに苦労し、4番に意識が集中。その初球に勝負手は決まった。
貯金10。4月22日の借金7から一気に来た。岡崎ヘッドが繰り返す「バント、エンドランとかを絡めていかないと、点は入らない。いくらヒットを打っても、ホームを踏まなければ点にならない」の指針。今2連戦、坂本は塁上に出るとじわりリードを広げ、偽走も仕掛け、重圧をかけ続けた。「ちょっとでも『走るかも』ってなったら嫌だと思うので」と、相手の首を真綿で締める快感を知った。前日は阿部、この日は長野、高橋由も犠打を決めた。役者に関係なく打線をつなぐ。高い技術を誇る選手たちに浸透させるのに、そう時間はかからなかった。
原監督の言葉にも力が宿った。「出足で上っ面を2、3度ひっぱたかれた。まだまだ、貪欲にいきたい。首位は悪いニュースではないが、交流戦残り8試合しっかり戦いたい」。個が優先した開幕のつまずきを無駄にはしない。実にいやらしい集団に変貌し、本命が首位に来た。【宮下敬至】
▼9回に長野と坂本がダブルスチール。巨人の重盗成功は5月9日藤村-坂本、同10日長野-寺内に次いで3度目。今季のセ・リーグで重盗を成功させているのは巨人3度と中日1度しかない。



