<楽天1-10巨人>16日◇Kスタ宮城
巨人が交流戦の初優勝を決めた。マジック1で迎えた楽天3回戦(Kスタ宮城)、1回表1死満塁から阿部の適時打で先制するなど序盤からペースをつかみ、15安打10得点と圧勝した。交流戦が始まってから8年目で、セ・リーグ球団の優勝は初めて。交流戦スタート時は勝率5割のリーグ4位も、ここまで貯金11の2位。開幕当初の出遅れから躍進し、初栄冠をつかんだ裏には、原辰徳監督(53)の変化、そして巨人野球の変化があった。
仙台の右翼スタンドに残った巨人ファンに向かって、原監督はトロフィーを高々と掲げた。「1歩踏み出せたということは、セントラル・リーグにとっては良かったと思います」。セ・リーグ一番乗りで頂点に立ち、笑顔で胸を張った。
今の強さは“事件”が源になった。開幕直後4月6日からの阪神3連戦を前にしたミーティングでのこと。原監督が見逃し三振を容認する発言をした。天敵・能見を攻略するためには、フォークに手を出さないことと判断したためだった。見逃し三振のリスクを背負って攻略法を徹底した。
主将の阿部が証言する。「『やってはダメ』という制約はあったけど『(三振)してもいいぞ』というのは初めてじゃないですか」。果断な打撃で交流戦をけん引した長野は、昨年85三振が今季すでに52三振。「容認発言」以降は46三振で、見逃し三振は19個。「狙い球を絞りやすくなるので、気持ちは楽になります」と話す。
巨人には昔から「見逃し三振は恥ずかしい」とする美学があった。一見すれば消極的な見逃し三振は許されない行為だった。
見逃し三振が許されるメリット。まず、ヤマが張れる。さらにはデータ重視にもつながる。例えばデータを根拠に外角変化球を待って、結果的に内角直球で見逃し三振であっても、根拠を提示した「ベンチの責任」と認める。原監督による容認は、チーム全体に大きな影響を及ぼした。
昨年までは極端に言えば「選手任せ」だった。今季は戦略室を創設し、データを活用する環境も整った。監督の決断が、選手の大胆なスイングを後押しした。変化が浸透するのに少なからず時間は要した。最下位に沈んだ4月下旬くらいから兆しが見え、勝率5割で臨んだ交流戦に入るころから実になった。
犠打、スクイズ、重盗。多彩な攻撃がクローズアップされるが、根底にあるのは意識改革だ。統一球による接戦が多い中、小技の必要性は打順に関係なく高まっている。進塁打のケースで、ベンチの岡崎ヘッドは「セカンドゴロだ!」と大声で叫ぶ。作戦が敵に漏れることよりも、意思徹底を優先する。その愚直さが、小技の成功につながっている。「ウチの打者はもともと、高い能力を持っている。彼らが小技を使えたら、鬼に金棒なんだよ。今はまだ、金棒ではなく短刀だけどね」と野望を話す。原監督は、交流戦前にナインに優勝を求めた。これも意思徹底の一例。「目標はあくまでもペナントレース」とも話す。ナインに徹底させる戦いが、今日からまた、始まる。【金子航】



