<巨人7-4ヤクルト>◇23日◇東京ドーム
推定年俸800万円の男が巨人原監督の采配に見事に応えた。先発沢村がいきなり3点を失う嫌な展開。4回に1点を返し、なお2死満塁で原監督は勝負に出た。沢村に代えて加治前竜一外野手(27)を代打に送る。加治前は押し出しの四球を選び、長野の一時逆転打につなげると、そのまま左翼の守備につき、6回1死三塁で勝ち越しの左前打を放った。今いる巨人の1軍野手で最も年俸の低いプロ5年目が、約2カ月ぶりに喫した連敗を2で止め、原監督の騒動にも区切りをつけた。
原巨人を救ったのは、途中出場の加治前だった。4-4の6回1死三塁。加治前は「スクイズもあるかも」と頭に入れ、打席に向かった。だが原監督の腹は違った。「カジに懸けたということ。(スクイズは)考えませんでした」。「期待に応えたい」。バットを握る加治前の手に力が入る。2ボールからの3球目。狙い球のスライダーを思い切りたたきつけた。打球は弾んで三塁手宮本のグラブの上を越えて左前へ。「いい場面で打ててうれしい」とホッとしたように笑った。
加治前の言う「いい場面」は、4回の攻撃がないとあり得なかった。阿部の二塁打で1点を返した後、高橋由とエドガーが四球。谷凡退で2死満塁となると、原監督は復調気配の先発沢村をあきらめ、代打加治前を告げた。
「下(2軍)から人を上げさせるわけにはいかない」と常々話すが、加治前は打ち気を抑えた。「後ろはチョーさん(長野)だし、絶対につなぐ」と押し出し四球を選んだ。2点適時打を放った長野の「竜一もしっかり見逃してつないでくれた。みんなの勝利」との言葉に、加治前の四球の価値は凝縮されていた。
原監督も同じだった。凡退なら、沢村の早期交代の是非が問われる可能性もあった。だが、加治前のスイングの強さに懸けた。「4回は1球1球、じわりじわりとダメージを与えて攻撃ができた。カジが雰囲気を変えた」。4回の攻撃終了後、谷に代え、加治前を左翼に配した。「残すことがベストと考えました」。またやってくれる。期待を込めて送り出した。
監督の思いを実感していた。「結果を出せば出場機会を与えてもらえる」。ここ2年は出場10試合にとどまり、今年の年俸は1軍野手で最も低い推定800万円。谷をはじめ、出場機会を争う右打者の牙城は簡単に崩せるものではない。だから本気で言う。「1打席に勝負を懸けています。自分は今年ダメなら終わり」。危機感を抱く男は「何としてもと、常に思っていた」と、チームに貢献すべく、ぎらついていた。原監督は「このゲームに関して非常にラッキーボーイでした」と褒めちぎった。
逆転勝利で連敗を2で止め、リーグ再開後初白星を挙げた。大貢献の加治前だが「まだまだ力も足りないしへたくそなんで、全力でやるだけ」と言い切った。ビッグネームだけじゃない。こんなひたむきな若き仕事人も、今季の原巨人を支えている。【浜本卓也】



