<DeNA3-5阪神>◇28日◇横浜

 勝ち運のある3連勝に、おまけもついた。阪神藤浪晋太郎投手(19)がDeNA戦で6回3失点と粘りの投球で3勝目。ドラフト制後では史上初の高卒新人4月3勝に達した。3点を追いつかれる苦しいマウンドを、スライダー中心の配球に切り替えて乗り切った。プロ初安打となる二塁打も放ち、勝ち星でリーグトップに並んだ。

 藤浪は4回に変身した。「序盤はしっかりコーナーを突こうと思って、丁寧にいきすぎたのがよくなかった」。2回に3点の先制点をもらった直後、松本に2ランを浴びるなど3失点。リードをはき出した序盤を反省し、思い切って腕を振った。配球もカットボール主体に変えると、1死から4者連続三振。6回までの3イニングは1安打1四球の無失点。試合の中で修正する、並の19歳にはできない能力の高さを発揮した。「中盤以降はカットボールがよかったので、相談したわけではないですけど、藤井(彰)さんもそれをくんでくれました。ストレート1本へのこだわりはないです。勝てるピッチングがしたかったので」と、ルーキーらしからぬ言葉を口にした。

 イニングが終わりベンチに戻れば、バッテリーで話し合うのが恒例だ。17歳も年上の藤井彰に「あれは失投でした」と打ち明ける。それが、結果的に打ち取ったボールでも同じとらえ方をしている。反省点を共有し、以降の投球につなげるスタイルだ。

 すぐに修正する「引き出し」は、高校時代から持ち合わせていた。甲子園春夏連覇をした大阪桐蔭で西谷監督と築いた「修正マニュアル」が脳裏にある。体が開けばこう、制球が悪ければこう、とシンプルな対処法を持っている。だからこそ、試合中に落ち着いて切り替えられる。

 カットボール主体でも、小手先でかわしたわけではない。主砲ブランコにはオール直球勝負で邪飛2本と左飛のノーヒット。「思い切って腕を振っていこうと思いました。昨日もチェンジアップをホームランしていたので、変化球は多少でも甘くなると持っていかれると思った」。強打者相手に堂々と投げ込んだ。

 打っては、9打席目にして記念すべきプロ初安打を記録した。6回2死一塁から直球を右中間方向へ運んぶ二塁打。球団の高卒新人による長打は74年掛布以来という“偉業”だ。

 リーグトップに並ぶ3勝と防御率1・67。高卒新人史上初となる3、4月度月間MVPにも近づいた。【山本大地】

 ▼藤浪がリーグトップに並ぶ3勝目を挙げた。2リーグ制後、4月までに3勝以上した高卒新人は、53年権藤正利(洋松)4勝、54年梶本隆夫(阪急)4勝、55年有吉洋雅(西鉄)3勝、62年尾崎行雄(東映)5勝に次いで51年ぶり5人目。ドラフト制後(66年以降入団)の高卒新人では初めてになる。藤浪は3勝すべて先発で記録。62年尾崎は先発1勝、救援4勝で、先発で3勝したのは、4勝のうち3勝が先発の53年権藤、4勝すべて先発の54年梶本に次いで3人目になる。4月2勝の99年松坂(西武)は16勝、4月1勝の07年田中(楽天)は11勝だったが、4月3勝の藤浪は1年目に何勝できるか。

 ◆セ・リーグの月間MVP候補

 先発投手は3勝が6人おり混戦。藤浪は1点台の防御率と高卒ルーキーという点をどう評価されるか。過去にセの新人で4月(3、4月含む)の受賞は98年の小林幹(プリンスホテル→広島)のみ。パを含めても高卒はいない。菅野(巨人)は奪三振が1位だが、小川(ヤクルト)に投げ負けた点がマイナス材料。救援なら10セーブの西村(巨人)が最有力だ。