鳴尾浜からはい上がれ!

 阪神掛布雅之GM付育成&打撃コーディネーター(DC=58)が11日、就任後初めて鳴尾浜で2軍を指導し、若虎に熱烈なエールを送った。次代の主軸候補・一二三慎太外野手(21)には密着で打撃技術をレッスン。「3割30本塁打がベスト」と将来的なノルマも課した。育成選手にも積極的に助言。若手の底上げと「下克上」を力説した。

 寒風吹きすさぶ鳴尾浜に“ホットコーナー”ができた。安芸から2軍本拠地に移っても、掛布DCの情熱は変わらない。午後のシート打撃。プロ3年目の一二三が打席に入ると、スッと斜め後方に立った。バットのトップ位置を確認するためだ。鋭いライナーが右中間を破ると「ヒフミ!

 ヒフミ!」と思わず連呼。両腕を上げて「○」のポーズを作り、ネット裏に戻るとサムアップで「グッド!

 いまのいいよ」と褒めた。

 2軍初指導で密着したのは将来の主砲と期待される一二三だ。瞬時に弱点を見抜く。フリー打撃でトップ位置の浅さを指摘し、バント練習時にはわざわざ呼び止めて、ともに狩野の打撃をチェック。飛距離を出す技術を惜しみなく伝えた。

 掛布DC

 いい形を持っているけど(構えてから)バットが下がって(トップ位置が)上がりきらないから球をとらえるタイミングで差し込まれる。一二三より狩野の方が飛ぶ。トップ位置、左腕の張りが浅い。

 生え抜きの若きスラッガーが育たない現状がある。阪神にとって最大の懸案と言っていい。だからこそ、ダイヤの原石を丹念に磨かなければならない。一二三は昨秋キャンプ紅白戦で本塁打を放った勝負強さがある。今季は左足首剥離骨折で2軍戦65試合出場にとどまったが、周囲の期待は十分。虎の本塁打王も言う。

 掛布DC

 長距離というか、遠くに飛ばす感じは中谷と同じ。本塁打数を打てる、そういう打撃を意識して自分なりの打撃を作っていかないと。(将来は)3割30本塁打がベストだね。

 阪神史上最多の通算349本塁打をマークした掛布DCは安芸キャンプ中、チーム宿舎で人知れず素振りをしていたという。体からあふれ出る熱意を抑えられない。一二三だけではない。若手育成を託された使命感がある。鳴尾浜の若虎と初対面。練習前は「甘えないで自分を追い込め。あなたたちの力は当然、必要です」と訓示した。育成枠の阪口を相手に、ロングティー打撃で就任後、初めてバットを振って、快音を響かせた。信条だったレベルスイングを初披露した。

 掛布DC

 (鳴尾浜に)残っている選手のレベルの高さにビックリした。荒木、阪口…。みんな、いい打撃をしているし、元気もある。何で彼らが安芸にいないのか。虎視眈々(たんたん)と上を蹴落とすというか、上の地位を狙ってやろうという気持ちを感じた。

 熱弁は止まらず、高卒のドラフト6位だった下積み時代を振り返る。「僕もここから1軍にグッと上がっていった。あれだけ掛布も練習して、あれだけ掛布も結果を出した。周りを納得させて1軍に上がってもらいたい」。ミスタータイガースは1日にしてならず。後進が歩む道が少しずつ見えてきた。【酒井俊作】

 ◆一二三慎太(ひふみ・しんた)1992年(平4)9月29日、大阪・堺市生まれ。美木多中ではジュニアホークス。東海大相模(神奈川)では3年春夏に甲子園出場。横手投げに転向した3年夏には準優勝に導いた。10年ドラフト2位で阪神入団。1年目は投手登録。1年目春季キャンプ中に右肩痛を発症し、2年目から野手転向。187センチ、83キロ。右投げ右打ち。