<巨人1-2DeNA>◇6日◇東京ドーム

 迷わず、勝負に徹した。DeNA中畑清監督(60)が巨人戦で今季初勝利をものにした。過去2年で2勝しか挙げてない「鬼門」の東京ドームで、継投で1点差を守りきる理想の野球で逃げ切った。試合前は、父貢氏が闘病中の巨人原監督を気遣いながらも、勝負となれば別。12球団で最も遅い2ケタ勝利にも、天敵を下して満面の笑みだった。

 1点差を死守し、中畑監督もうれしさを隠せなかった。「こういうゲームを夢見ていた。すごい緊張感の中で巨人相手に勝ちゲームが作れて、理想的と言っていい。かっこいい野球が出来ました」と胸を張った。

 迷いを断ち、継投を成功させた。1失点でしのいできた久保を6回で交代。「勝ちパターン」という長田、ソーサ、三上に後を託した。4月2日同戦では継投判断を誤り、8回で5点リードしながら逆転負け。この日も「迷いはあった」と明かしたが、久保が6回最後の打者を空振り三振に仕留めた直球を見て決断した。「魂を感じた。次に行かせてやりたい思いもあったけど、代えずにやられるイメージも出てきた。久保が出し尽くしたと思えて、決断出来た気がする」と素直に打ち明けた。

 試合前には、原貢氏の容体を気にかけ、原監督への気遣いもみせた。その背景にあったのは自身の記憶。現役最終年の89年7月、父辰雄さんが亡くなった。遠征中に当時の巨人藤田監督から、福島へ戻るように言われたという。最期をみとることは出来なかった悲しい経験だったが、「帰っていい、と言われてありがたかった半面、俺はチームの戦力じゃないのかな、っていう思いもあった」。選手と監督。立場は違えど、シーズン中にチームを離れることには複雑な思いがあるはず。身をもって知るからこそ、メンバー表交換時、「大変だけど頑張っていこう」とひと言、伝えた。

 それでも勝負は勝負。監督に就任した過去2年で巨人戦はわずか9勝。東京ドームでは2勝で今季もここまで4戦全敗だった。「ここで勝てば勢いが変わる。いろんな意味で大事な一戦。勝つことに集中する」と誓い、試合に臨んだ。

 負け続けてきた古巣相手に、1勝だけで喜んでばかりはいられない。就任以来、巨人3連戦でカード勝ち越しは1度もない。「うれしくて舞い上がりそうになったけど、まだ1つ目」と、引き締めることを忘れていなかった。【佐竹実】