<ヤクルト4-4日本ハム>◇28日◇神宮

 日本ハム大谷翔平投手(19)は、ピンチを楽しんでいるように見えた。7回2死一、二塁でバレンティンを迎えた。カウント1-2から力勝負で三振を狙った。高め直球はプロ入り最速タイの158キロ。「さすがに力が入りました」。この日122球目。闘争心が疲れを超越した。バットをかすめてファウルになったが、続く142キロスライダーで中飛に打ち取った。「抑えられてよかった」と息をついた。

 花巻東高時代から強敵ほど燃えた。父・徹さんは言う。「光星学院の北條君(阪神)や田村君(ロッテ)との試合は楽しみにしていました。力のある子との勝負は楽しかったよう」。今も変わらない。60本塁打の日本記録保持者は、申し分のない相手だった。

 3回の対戦は先制を許し、なお2死満塁。「調子は悪かった」が、その中で「辛うじてよかった」というカーブから入り、150キロオーバーの直球を続けて遊ゴロに抑えた。5回も2死一、二塁。157キロの直球で空振り三振に仕留めた。7回123球を投げ7安打2失点。「結果的に抑えられてよかった。粘れるピッチングはできたと思います」。5勝目は手にできなかったが、相手の主砲を抑え、チーム打率12球団NO・1の打線を封じた。

 前回登板の20日中日戦は、4点リードの6回に5点を失った。打線が逆転勝利するも、チームメートの声に反応しなかったという。自分に向けた怒りを静めるのに必死だった。それから8日。マウンドで受けた屈辱を、マウンドで晴らしてみせた。【本間翼】