<阪神0-4日本ハム>◇18日◇甲子園

 日本ハム大谷翔平投手(19)が、プロ入り後の甲子園初登板で自己最多11三振を奪い、6勝目をマークした。阪神打線を8回1安打無失点に封じ、自己最速タイ、甲子園の日本人最速となる160キロを2度計測。8回を打者24人で抑える準完全ペースの快投だった。22分間の雨天中断にも動じず、花巻東時代は2度の初戦敗退に終わった聖地で躍動した。

 過去はかすんだ。まばゆいほどに輝く、未来が広がった。苦い思い出しかなかった聖地で、大谷が勝者として君臨した。「(甲子園は)悔しい思い出しかない。球場ごとのイメージも大事かなと思うので、よかったです」。前回同様に右ふくらはぎがつったため、8回で降板。本人は不満だが、自己最多の11三振を奪い、1安打無失点。雨で22分間中断する難しい試合も、終わってみれば8回打者24人の“準完全”だった。

 超高校球児として土を踏んだ甲子園は、2度とも完敗だった。12年センバツで苦汁をなめさせられたのが、前日17日に13奪三振と好投した阪神藤浪だった。「昨日(17日)落としてるので、勝ちたかった」。同期生の奮闘に、燃えた。

 最初のどよめきは、2回だった。先頭のゴメス。外角低めへ外れた3球目。甲子園のスコアボードが「160キロ」を表示した。敵地を包む、異様な雰囲気。2死となり、今成を2球で追い込むと、再び160キロで空振り三振を奪った。3試合連続でたたき出した自己最速タイだ。迎えた6回2死の大和。フルカウントから、131キロのスライダーが甘くなった。左前へ、この日初めての、そして唯一の被安打。歓声にもかき消されないほどのため息が、360度を虎党が囲む甲子園で、曇天の夜空に響いた。

 栗山監督は3年前の夏、2年生で甲子園に初出場し敗れた大谷の姿を思い出していた。大谷には苦い記憶でも、指揮官の見方は違った。「よかったのかも、それが一番大きいかもしれないよ、翔平にとって。負けず嫌いだから。悔しさ、屈辱って、あれだけの能力を持った選手は持ちづらいから。『あのときなんでできなかったのか』って、悔しさのまま(プロでも)ぶつかっていくことができる」。妥協のないトレーニングで約7キロ増量。投球フォームが安定し、制球が抜群に向上した。挫折をバネに、圧倒的な姿で同じマウンドに帰ってきた。

 つった右足は、再び経過を見ることになる。野手出場に影響が出る可能性もある。投打をこなしながら手にした、6勝目。異次元の進化を、聖地で証明した。【本間翼】

 ▼大谷がプロ入り最多の11奪三振で6勝目。この日は8回まで毎回三振を奪い、許した走者が6回、左安の大和だけ。許した走者1人だけで完封する「準完全試合」は43人、46度記録されているが、10代で記録した投手はおらず、毎回奪三振で準完全試合を達成した投手も過去にいない。大谷が8回で降板し、惜しいところで史上初の快挙を逃した。