<東京6大学野球:早大3-0東大>◇第2週第2日◇21日◇神宮

 「反骨の左腕」が、史上3人目の完全試合を達成した。早大・高梨雄平投手(3年=川越東)が東大戦に先発し、三振6、内野ゴロ9、内野飛球(邪飛含む)7、外野飛球5で、打者27人で投げ切った。完全試合は00年秋の立大・上重聡(現日本テレビアナウンサー)以来13年ぶり3人目で、過去早大投手はノーヒットノーランもなかった。甲子園出場経験はなく、2季ぶり先発だった無名左腕が、歴史に名を刻んだ。立大は延長10回サヨナラで明大を破り、1勝1敗に戻した。

 快投を続ける高梨の元に8回、同期生の有原が歩み寄った。「完全試合は上重さん以来らしいぞ…」。あと3人に迫った9回は捕手の土屋から「オレは期待している」と声を掛けられた。プロの世界では大記録を前に近づきにくくなるのが常だが、最近の大学生は遠慮なんてしないのか。高梨は「めちゃくちゃ意識させられました」と笑うしかなかった。

 9回。遊ゴロ、捕邪飛で2死を奪う。最後はカウント1ボール2ストライクから、外角低めにワンバウンドする121キロスライダーを振らせた。「追い込んでからは三振を狙いました」。13年ぶりの完全試合に、遠慮なき仲間たちからの手荒い祝福が待っていた。

 この日の最速は139キロ。驚くスピードはないが、右打者の胸元を突き、カーブ、スライダー、チェンジアップをコーナーに散らせた。リーグ戦先発は昨年6月4日の早慶戦以来。昨秋は左ひじ痛、左足首痛に悩み、1勝止まりだった。12月には「早く治るなら」と左足首の手術に踏み切った。全体練習に合流したのは2月。リハビリ中にヒジ痛も癒え、昨春の全日本大学選手権MVP吉永健太朗投手(2年=日大三)に競り勝ち、第2戦先発を任された。

 川越東では県4強が最高成績で、甲子園出場はない。「目立ったことは今まで生きてきてないんです」と言う。その中で有原、吉永らの甲子園組と先発枠を争う。「高校の実績はなくても、大学で頑張ればできるということを、中学生、高校生が見て勇気を感じてくれれば」と言った。

 早大の先輩、オリオールズ和田の配球を研究し、ユーチューブで昨季20勝を挙げた左腕、大リーグ・レイズのプライスの投球に熱視線を送る。ただ試合前は、神宮のロッカールームで大好きな女優平愛梨の動画に見入った。「反骨の左腕」は、20歳らしいリラックス法で、マウンドに上がっていた。【前田祐輔】

 ◆高梨雄平(たかなし・ゆうへい)1992年(平4)7月13日、埼玉・川越市生まれ。高階南小3年から「川越リトル」で投手として野球を始める。高階西中では「川越シニア」所属。川越東では当時監督だった日本ハム阿井ヘッドコーチの指導を受け、3年夏に県大会4強。最速143キロ。家族は両親、弟。柴咲コウのファン。175センチ、75キロ。左投げ左打ち。リーグ通算11勝3敗。