球界単独最高俸より“イチローマシン”!

 中日岩瀬仁紀投手(36)が8日、名古屋市内の球団事務所で契約交渉を行い、現状維持の年俸4億3000万円で更改した。交渉前から巨人小笠原道大内野手(37)と球界最高タイで並んでおり、少しでも上積みがあれば単独トップとなったが、岩瀬は球団側の打診を辞退。代わりにコンディション維持に必要な最新マシンをナゴヤドームに設置することを要望した。

 岩瀬にとっては、地位や名誉より欲しいものがあった。約1時間30分に及んだロング交渉だったが、その内容は、金銭面でなく、意外な“お願い”だった。

 「ここ2年、終盤に苦しんでいたので体の面を考えて、新しいマシンを入れてほしいと要望しました。球界トップ?

 上げてくれるとは言ってもらったんだけど…。1番とかそういうのはいいよ」。

 岩瀬の今季年俸は、すでに4億3000万円で更改した巨人小笠原と並び、外国人を除けば球界最高だった。あくまで推定年俸の世界だが、1円でも上積みがあれば球界単独トップというステータスが手に入った。今原球団代表補佐も「球界最高年俸にはこだわっているの?」と、返答次第では上積みの用意があることを伝えたという。だが、岩瀬はあっさりと辞退した。

 代わりに要望したのはコンディションづくりを助けてくれるトレーニングマシンだ。岩瀬が毎年、自主トレを行う鳥取市内のスポーツジム「ワールドウィング」が開発したもので、肩甲骨など関節の可動域を広げて、動きをスムーズにしてくれる。マリナーズのイチローも使用しているマシンの最新版だという。

 岩瀬は昨季途中、原因不明の右手のしびれに見舞われて登板できない時期があった。今季もそれは完全に消えたわけではなかった。プロ入りから12年連続50試合以上の登板を継続中の鉄腕をおびやかす不安要素。それを解消するためにも球団お墨付きで、本拠地に最新マシンを導入してもらう必要があった。

 「思うようなボールが投げられない時期があった。投げたくても、投げられないこともあった。疲労だけでなく、ケアの問題もあったと思う。ただ、あのマシンがナゴヤドームにあれば、試合前でも、試合後でも体をケアできるから」。

 日本球界初の通算300セーブまであと「24」。来季は大記録、そして球団史上初の連覇という明確な目標がある。岩瀬の視線は「球界最高年俸」という肩書より、次なる挑戦に向けられていた。【鈴木忠平】