<ウエルター級66・6キロ契約12回戦>◇6日(日本時間7日)◇米ネバダ州ラスベガス

 世界4階級制覇のマニー・パッキャオ(29=フィリピン)が、階級の壁を打ち破る衝撃的な勝利を挙げた。6階級制覇のオスカー・デラホーヤ(35=米国)をスピードで圧倒して8回終了TKO。最近獲得した世界王座で4階級、体重にして10キロ以上軽く、身長とリーチでも約10センチ劣りながら、ボクシングの常識を覆した。<1回>デラホーヤは左を小刻みに突く。パッキャオはステップを使い踏み込むタイミングをうかがう。1分すぎにパッキャオのいきなりの左ストレートが顔面にヒット。さらに左を2発追加した。デラホーヤは体の力を抜くように軽い左を出し続けた。<2回>デラホーヤがゴング直後にロープに詰めたが、パッキャオは勇敢に迎え撃った。左のカウンターを決め、スピードに乗った右フックを切り返す。中盤以降はパッキャオが左ストレートをジャブのように多用し、右フックでボディーをたたいて優勢。<3回>デラホーヤのジャブが増えたがスピードも切れもない。それでも前へ出てワンツーを狙う。パッキャオは軽くバックステップしてかわし、上体を動かしながら左を突く。左から右フックをボディー、顔面に連打するパターンが有効だ。<4回>パッキャオはフットワークも軽快だ。デラホーヤを軸に右に回りながら好機をうかがう。相手の右ストレートに右フックのカウンターを合わせ、左ストレートを上下に打ち分け、左アッパーも突き上げ始めた。デラホーヤは動きが重くパンチも中途半端になっている。<5回>デラホーヤは前に出るが効果的なパンチが出ない。パッキャオはステップを刻みながら左フックから右フックをヒット。右ジャブを突いて左ストレートをボディーに。デラホーヤの前進を体でブロックしてボディー連打を放つなど自在に戦っている。<6回>パッキャオがこれまでとは逆の左に回り始めた。鋭く飛び込んで左ボディー。離れると左ストレートをリズミカルにフリッカージャブのように突き上げる。左連打から右フック、右ジャブから左と完全にペースを掌握した。デラホーヤの体は動かない。<7回>パッキャオが攻勢に出でた。コーナーにデラホーヤを追い込み、パンチをまとめた。左ストレート、アッパー、右ボディー、左アッパーを確実にヒットする。デラホーヤの足はまったく動かない。一方的に打ち込まれながら何とか持ちこたえた。<8回>パッキャオの猛攻が続く。30秒すぎからコーナーに詰めて連打を仕掛けた。デラホーヤの左顔面が腫れ上がっている。ダメージは明らかだ。終了間際にもパッキャオが攻めた。左フックを上下に打ち分け、デラホーヤの足をふらつかせた。デラホーヤはセコンドの指示もあり、この回終了でギブアップ。パッキャオがボクシングの常識、階級差を覆す衝撃的なTKO勝利を収めた

 ◆パッキャオの話

 この試合のために十分な準備をしてきた。とにかくスピード重視、それしかなかった。足を使い、速く動くという作戦通りの戦いができた。チャンスをくれたデラホーヤに感謝している。彼は今でも私の最高のアイドルで素晴らしいファイターだ。

 ◆デラホーヤの話

 パッキャオは偉大なファイターだった。素晴らしいファイトをしたと思う。今日は彼の力が完全に私を上回っていたんだ。私のハートはまだ戦いたがっている。でも。それにフィジカルがついていくかどうかは別の問題だ。引退?

 それについてはじっくり考えて判断したい。今日という日は終わった。明日はまた、まったく違う1日が始まるんだ。