10年目を迎えた花組の鳳月杏は、節目の「男役10年」で初のセンターの座をつかんだ。宝塚バウホール公演「スターダム」(24日~8月3日)で、新人公演を通じても初めての主演。米オーディション番組に突然現れたスターの卵を演じるが「実際に輝いて見え、そういられるように」と、自分磨きのまっただ中だ。
昨年末、月組から花組へ異動し、4月にひとつの基準となる「男役10年」を迎えた。「組替えして節目を迎え、主役の話をいただき、うれしさと戸惑いがありました」。新人公演でも主演経験がなかった。
「お客さまからは『キャリアがあるのね』という目で見られると思うので、質の高いものに。カンパニーとして支えてくれる上級生、下級生はありがたい」
初センターに戸惑いながらも、堅実な役作り、表現力に定評があり、確かな下地はある。今作は米国を舞台にした青春群像劇。オーディション番組に挑戦する才能豊かな歌手役だ。そこで、具体的なテレビ番組名を挙げた。
「夢を追い求め、この1回に懸ける集中力をしっかり表現したい。モーニング娘。らが生まれた『ASAYAN』の海外版のような。私も、一般の人がだんだん、スターになっていく過程を見るのは好きでした」
多くの歌手がカバーした米歌手レオン・ラッセルの名曲「ア・ソング・フォー・ユー」など、70~80年代の曲が多い。オーディションという「一発勝負」に懸ける心情に実体験を投影する。作品、演出家によっては主役以外は、キャリア、学年に関係なく、オーディションで選考することがある。
「宝塚の受験は何も考えずに合格して、入ってから苦労しました。でも、劇団で(キャスト)オーディションを経験して、その緊張感を思い出しています。いつもと違うメンバーを選んでくれることもあるし(演出家に自分を)見てもらえるので。私もダンスの役を得たことがありますし」
子どものころ、クラシックバレエは習っていた。歌のレッスンはしていなかったが、歌も好き。「真ん中で1曲歌う感覚は今までなかったので、どうなるんだろう」と思いをはせる。
「お芝居はもっと好き。芝居の中で歌に気持ちをのせ、きれいな旋律を出していきたい。ダンスも同じ。すべて気持ちを動かして臨むことが大事だと思う」
素顔は柔和なたたずまい。だが、ひとたび舞台に上がれば、色気、野性味を醸し出す男に変貌する。
「ギャップを意識していないですが、そう言われればうれしい。ただ私、よくも悪くもマイペース。クールに見られがちですが、そうでもない。男役10年、ここ3~4年は濃かった」
新人公演を卒業した一昨年以降は、各公演で重要な位置に入ることも増え、責任感が鳳月を変えた。「自分の男役、やりたいこと、個性が作られ、出せるようになった」。結果としてギャップにつながった。
異動を経て、新しい仲間から刺激も受ける。花組のトップ明日海りおは、月組で一緒だった先輩だ。明日海からは「自分が真摯(しんし)に取り組んでいたら、下級生はちゃんとついていこうと思ってくれる」と言われ、自信を深めている。【村上久美子】
◆ミュージカル「スターダム」(作・演出=正塚晴彦氏) 優勝者に歌手デビューの権利が与えられる米オーディション番組に臨み、夢を追い求める若者と、彼らを支えるスタッフの姿を描く群像劇。視聴率の低下から打ち切りがささやかれ始めたとき、1次選考の会場にただならぬ資質、雰囲気を漂わせる青年リアム(鳳月)が現れる。スタッフは彼に番組の再生を懸け、彼は内に葛藤を秘めながらも、優勝を目指し厳しいレッスンに励む。
☆鳳月杏(ほうづき・あん)6月20日、千葉県船橋市生まれ。国府台女子学院中学部を経て、06年「NEVER SAY GOODBYE」で初舞台。月組に配属。09年「エリザベート」で黒天使役。12年「ロミオとジュリエット」新人公演で死の役。13年「ベルサイユのばら」新人公演で、最終7年目でアンドレ役を得た。昨年12月に花組異動。身長172センチ。愛称「ちなつ」。



