レコード、CDの総売り上げが8000万枚を超える英国のロックバンド、デュラン・デュランが、ロンドン市内で、日刊スポーツの単独インタビューに応じた。5年ぶりの新アルバム「ペイパー・ゴッズ」を11日に発表する。78年の結成以来、活躍を続けてこられた秘訣(ひけつ)や日本への思い入れなどを語った。

 「ニューロマンティック」と呼ばれるムーブメントを起こしてから30年以上。市内のスタジオに現れたメンバーが、新作について語る姿には、衰えることのない情熱を感じた。

 サイモン・ル・ボン(56)(以下サイモン) 前作「オール・ユー・ニード・イズ・ナウ」は過去を振り返った作品。今回はダンス寄りの音楽にしたかった。

 ジョン・テイラー(55)(以下ジョン) 本作はオープンな態度で臨んだんだ。

 年齢に関係なく才能ある人間と積極的に組む。今回も、マドンナやデビッド・ボウイらを手掛け、以前にも組んだナイル・ロジャース(62)や、気鋭のマーク・ロンソン(39)らがプロデューサーとして参加。米女優リンジー・ローハン(29)が歌手として参加し、収録曲「Danceophobia」に看護師役でカメオ出演している。

 サイモン リンジーは友人の1人。「参加したい」と連絡があった。最高だった。声が雌猫のようで看護師としては最高。少年たちも「ヒェ~」と興奮するんだ(笑い)。彼女はプロフェッショナル。素晴らしかった。誇りに思うよ。

 ジョン 雌ライオンを手なずけるような感じがしたよ。ワイルドなエネルギーがあり、不思議だけど痛切さも感じ、セクシーと同時に感動的だった。

 80年代のMTVブームの火付け役で、全英、全米の両チャートを席巻。日本でもシングル「プリーズ・テル・ミー・ナウ」などがCM曲に使われ人気を得た。スーパーバンドにのし上がったが、メンバーチェンジや脱退も経験。停滞期もあったが解散はしなかった。

 ジョン ザ・ローリングストーンズのミック・ジャガーがかつて言っていたのは「決して解散するな」。僕らもバラバラに進むことが何度かあったけど、必ず「母船」に戻ってきた。

 ニック・ローズ(53)(以下ニック) 柔軟性があって、実験室のようなバンド。どんな音楽を作っても満足できる。それはオーケストラを使ってもそうだ。

 ロジャー・テイラー(55)(以下ロジャー) 新しい可能性やアイデアを受け入れる広い心で臨めることが、理由の1つかな。

 サイモン お互い尊敬の念とそれぞれの違いに対する忍耐を持っている。違うからこそ、面白いバンドになる。

 同世代のバンドやアーティストはブームをけん引した仲間でもあり、しのぎを削ったライバル。今も交流を持つ。

 ロジャー スパンダーバレエとは連絡を取っている。(サッカーのプレミアリーグの)チェルシーとアーセナルみたいな関係。フレンドリーなライバルだ。

 サイモン U2は友人。一緒に南フランスに行くことがあれば、そこに家を持つボノやエッジに電話を入れたりする。

 現在の音楽業界に思うこともそれぞれある。

 ニック レコード会社は以前、アーティストを育てるため時間や資金を使うことをいとわなかった。今はすぐ曲を発売し、チャート1位を求める。育成しないのは間違い。悲しいことだ。

 サイモン レコード会社は音楽を安売りしている。もっとアーティストを擁護してほしい。でも音楽シーンは健康的だ。多くのアーティストがさまざまなことに挑戦している。

 05年以来、来日公演がない。ニックが「招待されたらいつでも行くよ。全員が日本を崇拝している」と口火を切ると、来日時の思い出話で盛り上がった。

 ニック (デザイナーの)イッセイ・ミヤケに会ったのが僕のハイライトだった。今度は森山大道やアラーキー(荒木経惟)のような写真家に会いたい。そういえば(東京・原宿の)キディランドで迷子になったこともあった。40分間も店内を行ったりきたりして通訳を探した。携帯電話も現金もなく、クレジットカードしかなかった。面白い経験だったね。

 サイモン 花見に行きたい。桜の下でパーティーして(酒好きの)僕のような人が熱かんを飲んで倒れたりするわけだ(笑い)。

 ロジャー ファンがタクシー20台で僕らを追い掛けてきたのを覚えてる。愛があったなぁ、双方向のね。【取材・構成=近藤由美子】

 ◆デュラン・デュラン(Duran Duran) メンバーはサイモン・ル・ボン(ボーカル)ニック・ローズ(キーボード)ジョン・テイラー(ベース)ロジャー・テイラー(ドラムス)の4人で構成。78年に英中部バーミンガムで結成。ニックとジョンは結成時からのオリジナルメンバー。81年シングル「プラネット・アース」でデビュー。

 ◆ニューロマンティック ダンサブルなビートと洗練されたファッションや派手なメークなどビジュアルも重視した音楽界のニューウエーブ。デュラン・デュランをはじめ、ヴィサージ、カルチャー・クラブ、ヒューマン・リーグ、スパンダー・バレエなどが有名。

<デュラン・デュラン アラカルト>

 ▼バンド名 68年映画「バーバレラ」に登場する悪役デュラン・デュラン博士が由来。

 ▼売り上げ アルバム13枚、シングル39枚で総売上は8000万枚以上。ヒット曲は「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」「プリーズ・テル・ミー・ナウ」「ザ・リフレックス」など。

 ▼ダイアナ元妃 ファンを公言。アルバム「リオ」のテープを旅行に携帯とも言われ、ロジャーはダイアナ元妃がファンだったことを認め、同じジムで会話を交わしたこともあるとか。

 ▼「007」 85年映画「007/美しき獲物たち」の主題歌「A View To A Kill」を歌い、同映画シリーズ主題歌で初めて全米チャート1位に。