第24回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原裕次郎記念館協賛)が5日決定し、加賀まりこ(67)が「神様のカルテ」などで助演女優賞を受賞した。

 「安曇さんという役がくれた賞だと思います」

 演じた役名を挙げて、加賀は素直に受賞を喜んだ。大事にした役だった。演じた役の安曇雪乃は末期がんで大学病院に見放されるが、医師・栗原(櫻井翔)のいる小さな病院で、幸せな最期を迎える。「役と別れる、離れるのが嫌だった。女優人生で初めて味わった思いで、自分でも不思議な感情だった。初日舞台あいさつの時、これでこの役とお別れするんだということをヒシヒシと感じて、喪失感があった」。

 深川栄洋監督から出演依頼がある前に原作を読んでいた。「安曇さんに心が動いていました。だから依頼にはびっくりしました。安曇は手を差し伸べたくなる女性なら、私は強いイメージがあって、手を差し伸べてもらえないタイプなので、こういう役はキャスティングされないと思っていましたから」。役作りで、痛み止めのモルヒネが効いている間の患者はどうなるのかを知るため、実際の患者に会いに行ったりした。

 同じ深川監督の映画「洋菓子店コアンドル」で演じた元女優の老婦人役も高く評価された。「存在感が出せたらいいなと思って演じたので、うれしいです」。「神様-」で共演した宮崎が主演女優賞と聞いて「うれしいですね。私も女優として、これからもいろいろな色に染まりたい」と喜び、続けた。「授賞式で安曇さんにまた会えるような気がします」。旧友との再会を待ちわびる、優しい笑顔をみせた。【林尚之】

 ◆加賀(かが)まりこ

 1943年(昭18)東京生まれ。高校在学中にスカウトされ、62年に「涙を、獅子のたて髪に」で映画デビュー。高い演技力と自由奔放な言動から「小悪魔」の異名を付けられ、映画「月曜日のユカ」などで人気者になった。劇団四季「オンディーヌ」で主役を務めるなど、映画、ドラマ、舞台に活躍。80年に映画「夕暮まで」でブルーリボン助演女優賞。