25年目のJリーグで、世界仰天の50歳弾が生まれた。J2横浜FCのFWカズ(三浦知良、50)がザスパクサツ群馬戦(ニッパツ)の前半40分、今季初ゴールを決めた。ゴール前のこぼれ球を左足で合わせ、直後にカズダンスも舞った。自身の持つJリーグ最年長得点記録を50歳0カ月14日に更新。これが決勝点となり1-0で勝ったチームは3位に浮上した。プロ32年目、カズの名がまた世界に伝わった。

 50歳の点取り屋カズが本領を発揮した。前半40分。FWイバのシュートのこぼれ球に反応。ゴール前左の角度のない位置で目の前にはGKとDFがいた。これまで経験した幾多の得点機から瞬時に最善策をチョイス。「あそこしかなかった。しっかりミートしよう」。左足で合わせ、コースを消しにきた2人の前を通し、ここしかないという逆サイドの右隅に決めた。

 直後も冷静だった。「カズダンスをやるとなかなか勝てなかったので。迷いました」。勝利の舞には早いが「まあ、いいか」と決行。50歳初のダンスは「早いとがちゃがちゃするから」とテレビ映りも意識し、ゆっくり魅了した。最後は片膝で立ち、右手の人さし指をせり上げるようにして天に向けた。ゴールも、ダンスも、技ありだった。

 試合前には両軍で東日本大震災から6年への思いを込め、黙とうした。あの時、Jリーグも日本代表戦も中止された中、復興支援マッチで日本代表から得点。鎮魂のカズダンスを届けた。今なお、サッカーの力を体現し続けるキングは「ゴールして、何か届けられたらと思っていた」と被災地への思いも口にした。

 前日11日にジュビロ磐田MF中村俊が大宮アルディージャ戦で決めたFK弾に奮い立ってもいた。「昨日は俊輔も決めましたし、香川も(ドイツで)頑張ったみたいだし、自分も取れたらいいなと」。その中村俊は、少し前に真顔でこう言っていた。「カズさんはパワースポット。会うだけで元気をもらえる」と。世界中探しても、こんな50歳はいない。カズゴールが決勝点となり、横浜FCは3位につけた。

 この日はベンチに16歳のGK大内が入っていた。「50歳だからというより、FWとして点を取れたことが一番うれしい。どうしても年齢のことは言われますけど、自分の中では重要視していません。僕の子供よりも若い選手たちとも、毎日練習を全力でやっていく。その積み重ねがゴールになっているのかな」。世界を驚かせる50歳弾も、練習の積み重ねのご褒美だと、カズは事もなげに言った。【八反誠】