日本サッカー協会トップが電撃交代する。役員改選を控えた日本協会は23日までに、小倉純二副会長(71)の会長昇格人事を固めたことが分かった。25日の評議員会での承認を経て、新理事会での互選で正式に決まる。任期満了の犬飼基昭会長(68)は1期2年の短期政権に終わり、このままサッカー協会を退会する見通し。W杯南アフリカ大会でベスト16入りを果たし、日本サッカー界は上昇機運をつかみつつあっただけに、内外に大きな波紋を呼ぶ電撃人事となった。

 まさかのトップ交代劇となった。犬飼会長はこの日都内の協会に姿を見せず、午後2時からの常務理事会では、小倉副会長の会長就任が確認され、犬飼体制の1期2年での終わりが決まった。

 W杯での好成績とは対照的に、役員改選へ協会内は早くから足並みが乱れていた。14日に予定されていた次期役員候補推薦委員会(以下推薦委員会)は、選出方法に異論を訴える声に押されて中止。22日にようやく1回目が開催された。

 その背景には選出方法への疑問と同時に、協会上層部が犬飼会長に対抗する運動があった。犬飼会長の2期目を支える推薦委員会の委員長・川淵三郎協会名誉会長に、田島専務理事は選挙の実施を強行に訴えた。本来、一致団結すべき時期に権力闘争に時間を費やした。

 一方で理事(25人)による無記名投票での結果が一部に漏れ、得票数が伸びなかった犬飼会長の続投を疑問視する動きもあった。こうした状況を打開するため、推薦委員会はFIFA理事を務める小倉副会長の昇格で混乱終息を図った。

 犬飼会長は08年7月からこれまで、育成面の充実を柱に、若年層の指導者養成へ、スペインなど強豪国との交流を推し進めてきた。歯に衣(きぬ)着せぬ発言で批判を浴びたこともあったが、着実に日本サッカーの底辺を強化することに努めてきた。

 また、W杯では解任論が相次いだ日本代表岡田監督を最後まで支え、ベスト16快進撃を陰で支えた。22年W杯招致に名乗りを上げ、積極的な招致活動を欧州、南米で展開。サッカー強豪国での人脈も築いてきたなかでの交代だった。22日にはあいさつに訪れた岡田監督に「この部屋も片付けないとな」と言い、会長交代を覚悟していた。

 今後、日本協会としては代表の後任監督人事が急務となる。監督人事の後ろ盾になるはずの協会トップが、短期で代わるのは最悪のタイミングと言える。日本協会はもっとも大切な時期に、大きな代償を払う人事を選択した。