<J1:G大阪2-1横浜>◇第16節◇18日◇万博

 G大阪の日本代表MF遠藤保仁(31)が「記念弾」でチームを生き返らせた。前半9分、ペナルティーエリア左からFKを直接決めて先制。同26分にはCKをDF山口智(33)の頭に合わせ、横浜を下した。J1での直接FK15点目は、元日本代表MF三浦淳宏に並ぶ歴代最多。前節まで6戦連発、得点ランクトップのFWアドリアーノがカタール移籍決定的。戦力ダウンの危機で公式戦5試合ぶりの勝利に導いた。

 雨の万博で、遠藤がいきなり魅せた。開始から9分、ペナルティーエリア左で得たFK。「宝刀」を警戒した横浜は、ニアサイドに守備を固めた。「雨の日はボールが曲がりやすいので速いボールを。物理的には分かりませんが、そんな傾向があります」。経験に裏付けされたボールは、人数の少ないファーサイドへ。飛びつくGKを越える芸術的先制弾に「いいコースに飛んだ」と喜んだ。

 歴史に名を刻んだ。00年7月福岡戦で初めて決めたJ1での直接FKは、これで15点目。無回転とブレ球を使いこなし、「FKの名手」と言われた三浦淳宏に並ぶ歴代トップだ。「FKのコツ…いやあ、ないんですけどね」と照れるが、ボールと天候によって蹴る強弱を使い分けるほど繊細。「優しくパスを送るように」放つ武器は、数字も日本屈指だと証明してみせた。

 16年前、夕暮れの鹿児島・桜島中にはサッカーボールの音が響いていた。校舎とグラウンドとの隙間5メートルで、遠藤少年は1人で黙々とボールを蹴った。排水溝を的に、自ら状況も想定。桜島中で指導した藤崎信也さん(51)は「努力するのを見せたがらない、陰でやる子ですからね。最近まで誰も知らなかったんですよ」と笑う。隠された努力で、誰もマネできない技術が培われた。

 前日17日にはFWアドリアーノの退団が決定的となり、チームを離れた。「一番点を取ってる選手だけに痛いのは間違いないけど、いるメンバーで前に進むことを考えるしかない」。公式戦の白星は、5月21日新潟戦以来28日ぶり。遠藤の右足が、G大阪の「アドリアーノショック」を振り払った。【近間康隆】