<陸上:全日本実業団対抗>◇初日◇21日◇福岡・博多の森陸上競技場

 男子1万メートル日本人トップは宮脇千博(21=トヨタ自動車)で27分41秒57、大会記録を9秒も更新した。日本記録に6秒と迫る歴代6位タイ、今季日本最高でもあった。

 昨年11月にも今回とまったく同じタイムで走っている。高卒2年目の選手で27分50秒を切ったのは史上初という快挙だったが、宮脇はそのときのタイムを100分の1秒まで正確に覚えていなかった。「あまり過去の自分に興味はありません。自己記録を狙って走るのでなく、来年の世界陸上A標準(27分40秒00)や、日本記録(27分35秒09)を見ていました」

 高校時代は国体1万mで入賞しているが、全国トップとは少し距離があった。トヨタ自動車入社後に急成長し今年のロンドン五輪代表を狙ったが、6月の日本選手権は3位で惜しいところで届かなかった。「もちろん悔しかったです。その後の記録会では気持ちも体も戻せず走れませんでした。でも、そこから気持ちを切り換えて夏合宿はしっかり練習でき、このレースには自信を持って臨めました」

 昨秋の27分41秒57は記録だけを狙うレースで、ペースメーカーがついていた。今大会もケニア選手たちが引っ張ったが、あくまでも勝負優先のレース。「7000メートルで一度離れかけた後に、追いついて粘れた点が成長したところだと思います」

 時期的にも昨秋は、駅伝やトラックレースが続いた時期でスピードが研かれていた。今回は夏合宿後で「スピード対応が不十分」という状態。同じタイムでも今回の方が価値が高い。

 日本記録は高岡寿成が2001年に出した27分35秒09。ロンドン五輪代表だった佐藤悠基(25=日清食品グループ)や宇賀地強(25=コニカミノルタ)ら、箱根駅伝で活躍した選手がこの2~3年で挑戦しているが、なかなか破ることができない。箱根駅伝を経験せず高卒後すぐに世界へ目を向けた宮脇が、先輩たちに先んじる可能性が出てきた。