女子バスケットボールWリーグのシャンソン化粧品は28日、東京都内で会見し、昨年11月のデンソー戦の判定を巡り、静岡地裁に約3000万円の損害賠償金を求めて主審の男性審判員を提訴したことについて、説明した。シャンソンの杉山明宏部長と御宿哲也弁護士は「審判の行為に大変問題があった」とし、Wリーグに判定の検証と謝罪を求めたが、明確な回答がなかったため提訴に踏み切ったと明かした。「やりすぎ」という批判もある中、リーグ改革へ一石を投じた。
会見の冒頭でシャンソンの杉山部長は「レフェリーも人間。誤審はある。今回は違う」と話し、問題のデンソー戦、第4クオーター終了直前の映像を流した。
シャンソンは残り3秒3で53-53の同点に追いつかれた。ドリブルで相手陣内に切れ込んだ三好がファウルを受け、副審が手を上げてファウルを告げる笛を吹く。その直後に試合終了のブザーが鳴った。ファウルは時間内だったため、主審はフリースローの準備に入ったが、デンソー側の抗議で判定が覆った。シャンソンは判定そのものでなく、1度出された判定を何の説明もなく取り消した審判の行為を「意図的に不利な判定を行った」と問題視した。
シャンソンはWリーグに早急な検証を求め、3回にわたり書面を提出。ビデオ判定、コミッショナー設置の提案はあったが、検証や謝罪はなかった。スポーツに関する争いを解決する日本スポーツ仲裁機構(JSAA)への申し立ては、試合中の判定が審議から外れているため断念。杉山部長は「1度下された判定がなぜ取り消されたのか。検証しない限り改善はない」と法廷闘争の道を選んだ。
一企業が審判個人に多額の賠償金を求める異例の事態。美を求める化粧品会社でもあり、イメージは悪い。それでも「きちんと当事者同士が向き合って問題を解決し、再発防止に向かっていく」(同部長)と覚悟を持って司法の場に出る。賠償金が目的ではなく、訴状には「賠償金は再発防止のための審判育成の費用」に充てる意向を明記した。
審判団からは「シャンソン戦の笛は吹きたくない」との声がある中で、30日に同じデンソー戦(兵庫・姫路)がある。27日にはWリーグで緊急のチーム部長会が開かれ、西井歳晴専務理事から「仮に試合不成立となれば、懲罰になるかもしれない」と訴訟の取り下げを求められたが、シャンソン側は折れなかった。
個人への多額な損害賠償金の請求という展開に「やりすぎ」という批判がある。それでも課題とする審判の質、リーグ運営の向上を掲げ、シャンソンは強い覚悟を持って一石を投じた。前代未聞の審判騒動は、3月にも予定される初公判へ舞台が移された。
◆フリースローの取り消しVTR 昨年11月29日のWリーグ公式戦シャンソン化粧品-デンソー戦(愛知県豊橋市総合体育館)で、シャンソンは第4Q終了3秒前に53-53と同点に追いつかれた。その直後、シャンソンの三好がドリブルで切れ込みファウルを受ける。デンソーのチームファウルが5つを超えており、1度はフリースローが与えられたが、審判の笛よりも終了のブザーが早く鳴ったと判断され、フリースローは取り消された。試合は延長戦に突入。シャンソンが59-61で敗れた。翌30日付の日刊スポーツ静岡版でファウルの瞬間の写真を掲載。電光掲示板の表示は残り0・6秒となっていた。
◆シャンソン化粧品女子バスケットボール部 1961年(昭36)創部。72年に実業団リーグ(日本リーグ2部)に所属。77年に1部昇格。82年に初優勝。96年にはリーグ戦108連勝と黄金期。Wリーグ16回、全日本総合選手権10回の優勝。今季は16勝5敗で現在3位。
<シャンソン“誤審”問題経過>
◆11月29日 Wリーグ・デンソー戦で試合終了直前のフリースローが認められず、延長戦へ。59-61で敗れ、連勝が12でストップ。
◆30日 29日デンソー戦で不利な判定があったとして、Wリーグに抗議文書を送付。
◆12月2日 シャンソンの所属する静岡県協会がWリーグに検証、謝罪などを求めた意見書を提出。
◆6日 Wリーグの斎藤聖美会長と、日本協会の川淵三郎会長に意見書を提出。
◆7日 シャンソン川村修社長が都内スポーツ庁に出向き、鈴木大地長官に異例の直訴。経緯を説明する。
◆8日 日本協会の川淵会長は「まずはWリーグの中で解決すること」と静観の姿勢。
◆8、11、18日 Wリーグの西井専務理事に書面提出。
◆16日 Wリーグからビデオ判定、コミッショナー常設を検討するなどの回答が書面であった。
◆28日 11月デンソー戦の主審に約3000万円の損害賠償と新聞への謝罪文掲載を求め、静岡地裁に提訴。
◆1月27日 提訴に対し、Wリーグは「再発防止策の検討中に遺憾」と見解。


