世界6位の錦織圭(26=日清食品)が、同42位のアンドレイ・クズネツォフ(ロシア)を7-5、6-3、7-5のストレートで破り、14年以来2年ぶり2度目の16強入りを果たした。4回戦では自己最高のベスト8をかけ、14年全米決勝で敗れた同13位のチリッチ(クロアチア)と対戦する。

 勝った瞬間、錦織は何度も胸の前で繰り出した右手のガッツポーズに、思いがこもっていた。左脇腹のケガを克服し、不安な気持ちを抱く自分にも勝った。その喜びが右手に込められていた。2度の中断を含む約4時間半の試合に「勝ててうれしい。体にむち打った。痛みとともにやった。今日は出し尽くした」と、コートの中央でラケットを振った。

 2セット先取したところで約2時間、第3セット3ゲーム終了したところで約30分、降雨で中断した。集中力を維持するのは「難しかった」。それでも、第3セット0-3とリードされたのが唯一危ない場面。そこも逆転で乗り切った。

 前日の1日に予定されていた3回戦だが、降雨でこの日に順延された。またも恵みの雨だった。1回戦と2回戦が降雨で2日空いた影響で、2、3回戦は空き日なく、連戦となる予定だった。それが2、3回戦の間も1日空き「休めたのは良かった」。それでも「試合中に自分の痛みと闘う大会」で、耐えながら自己最高の16強入りした。

 4大大会でただ1つ、ベスト8以上の成績を残せていないのがウィンブルドンだ。だからこそ逆に「ここで結果を出したいという思いがある」と渇望する。「結果がついてくれば、好きになる」。

 05年。無名だった15歳の錦織少年は、初めてウィンブルドンの芝を踏んだ。ジュニア部門で、他会場で行われた予選を勝ち上がり本戦入り。初戦敗退だったが、芝の上で目を輝かせた。

 それから11年。ウィンブルドンでも勝ち星を日本男子歴代2位の11勝まで積み上げた。20年に、日本人として初めてウィンブルドンに出場し、ベスト4まで勝ち上がった清水善造に勝ち星で並んだ。

 今年、2回戦で“聖地”センターコートに入った。戦後、日本男子のシングルスとしては、初めて聖地で勝利を挙げた。センターに入る道には、トロフィーなどが飾られ、過去130回の歴史の重みが選手を見つめる。「神聖な気持ちになった」。ジョコビッチ、バブリンカらが敗れる波乱の大会で、4大大会最古を誇る緑の芝は、いつでも錦織の上位進出を待っている。【吉松忠弘】