<競泳:日本学生選手権>◇初日◇4日◇熊本市総合屋内プール

 最古の日本記録が、約4時間で2度塗り替えられた。女子100メートル平泳ぎ決勝で1年生の鈴木聡美(18=山梨学院大)が1分6秒32の日本新記録で初優勝した。予選では松島美菜(18=日大)が1分7秒23で泳ぎ、00年の日本選手権で田中雅美が出した男女を通じて最も古い日本記録1分7秒27を更新。鈴木はさらに0秒91上回った。3年後のロンドン五輪へ、楽しみな新星が台頭してきた。

 驚きのタイムだった。女子100メートル平泳ぎを鈴木はぶっちぎりで制した。タイムは日本女子で初めて1分7秒を切る1分6秒32。鈴木は「すごくうれしいです。日本記録は狙っていました」と顔をほころばせた。

 この日2度目の日本新記録だった。午前の予選で、決勝では鈴木に次ぐ2位に入った松島が1分7秒23を出し、日本記録を更新していた。同種目は、00年に田中が出した最古の日本記録。9年間、保持されたものが1日で2度破られた。松島の予選が正午ごろ、そして鈴木の快勝が午後4時ごろ。わずか4時間の“激変”だった。

 アシックスのラバー水着を着た鈴木は決勝で松島には1秒近い大差をつけた。スタートから積極的に飛び出すと50メートルは31秒42と、50メートル平泳ぎの日本記録31秒41とほぼ同じペースで苦しい後半でも踏ん張った。「松島さんに抜かれるんじゃないかと焦りはあったけど、記録を狙っていたので自分にムチ打っていきました」。約4時間の「日本記録保持者」に終わった松島は「プレッシャーを力に変えようとしたけど硬くなってしまった」と悔しがった。

 松島は昨年のインターハイ200メートル平泳ぎで大会記録を出したが、鈴木は福岡・九産大九州高時代は全国的には無名。日本選手権の準決勝にも残れなかったが、山梨学院大に入学後に急成長。高校時代の倍以上の1日1万3000メートルを泳ぎこんで、才能が開花した。

 世界選手権の優勝タイム1分4秒93(ソニ=米国)とはまだ差がある。しかしともに18歳で、ライバルとして競い合っていけば、ロンドン五輪で楽しみな存在となる。100メートル背泳ぎの日本記録を持ち、世界選手権代表だった酒井志穂(18)と高校の同級生だった鈴木は「私も世界で戦える選手になりたい」と世界に目を向けた。【前田泰子】