<大相撲名古屋場所>◇11日目◇21日◇愛知県体育館

 体重265キロをめぐるドタバタ搬送劇が起きた。史上最重量日本人力士で東十両10枚目の山本山(26=尾上)が、佐田の海に浴びせ倒しで敗れ、約1時間にも及ぶ騒動に発展した。

 ▽午後3時23分

 腕を抱えられながら強引に前に出た山本山だったが、背中からバタン!

 左ひざを負傷し、起き上がれない。呼び出しら数人の手で土俵下までコロコロ転がされる光景に、客席から笑いが漏れた。自力で歩けず、巨大車いすに乗って花道を引き揚げ、救護室に運ばれた。

 ▽同38分

 3人の救急隊員が到着。さらに応援部隊として消防車に乗った5人の消防局員も登場した。まず用意された担架は「無理だ」とすぐ撤収。次にやってきたストレッチャーも、上限150キロのため、あえなく退場。ある消防隊員は「これだけの体重の人は初めてなもんだで」と苦笑した。その間にレスキュー隊が4人追加され、救護班は計12人にも膨らんだ。

 「重さより幅が…」と別の隊員。救急車に乗らない可能性があり、リフトが付いた物資搬送用の輸送車が急きょ手配された。ここで再び問題が発生。人を荷台に乗せると道路交通法違反のため、やっぱり救急車で搬送されることに。

 車いす姿の山本山は会場の外に出た。救急車の最後尾に到着すると、事件のように周囲を青いシートで隠された。土俵入り直前だった幕内力士もやじ馬状態。心配したり、ニヤニヤしたり。「なんかでっかい車来てるな」と大関把瑠都。琴欧洲も「すげえ」。

 ▽同4時14分

 ほぼライオン1頭分に匹敵する重量だけに、仕上げも大変だ。力自慢の隊員や元力士の若者頭らが「せーの」と声を合わせること4回、ようやく体が浮き上がった。後輪を激しく沈ませながら、救急車は名古屋市内の病院へ。「骨に異常はないと思う。明日(22日)もう1度検査する。様子を見て(休場するか)決めたい」と尾上親方(元小結浜ノ嶋)。人気力士は負けても注目を浴びる「何か」を持っているようだ。【大池和幸】