5回2死一、二塁。阪神佐藤輝の1ボールから2球目を投げる前だった。サイン盗みを疑ったヤクルトベンチ、三塁手村上から、二塁走者近本の動きに対して審判にアピールがあった。ヤクルト側からは「動くな!」阪神側からは「絶対にやってない」「ごちゃごちゃいうな」と場内は騒然。両監督が審判団の前で約2分、考えをぶつけ合い事態は収まった。日刊スポーツ評論家の里崎智也氏(45)は、サイン盗み問題について分析。東京五輪を前に、国際試合こそ対策が必要だとした。

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阪神の二塁走者だった近本の動きは確かに怪しい部分もある。初めは左腕を二塁方向へ伸ばし、一度ひっこめた後に2度、二塁方向へ左腕を動かした。そして投球はそのとおり左打者・佐藤輝の内角へ行った。即座に「なにもやってへん」とベンチが言うのも怪しいが、こういうのは決定的な証拠というのは見つけにくいものだ。

球界からサイン盗み問題がなくならないのは、そのメリットが大きいからだろう。プロ野球選手ならば、球種かコースを教えてもらえれば、打率を大きく上げることができる。選手によっては打率5割を超すことができるのではないか。

五輪やWBCでもサイン盗みは公然と行われる可能性がある。私が出場した国際試合でも、特定のコースに構えると、同じような言葉が叫ばれることが多々あった。外国の言葉はわからないが、おそらく「高め」とか「外」とかをこちらがわからないようなスラングなどに変えて叫んでいたのではないか。そう感じた時は構えるのを遅くするなど工夫をしていた。東京五輪でも、こういうケースは考えられる。盗んでくる前提で取り組むべきだ。(日刊スポーツ評論家)