阪神がもはや無抵抗状態の中日を振り切った。一方、神宮ではヤクルトが広島に逆転負けを喫した。

山田 阪神が勝ちきって、ヤクルトが勝ちゲームをひっくり返されたのは、ここで両チームの心理状態は変わってきたとみていいだろう。ここまでくると残り試合数の多いほうが精神的に追い詰められて苦しくなるものだ。ヤクルトは残り5試合の戦いが非常にしんどくなってくる。かたや残り3戦の阪神が負けられない状況に変わりはないが、これでひょっとして生き返る可能性が出てきた。

阪神対中日 勝利を喜び合う阪神ナイン(撮影・宮崎幸一)
阪神対中日 勝利を喜び合う阪神ナイン(撮影・宮崎幸一)

前日20日までの阪神-ヤクルト2連戦(甲子園)は阪神の「〇」「△」で、1勝1分けだった。

山田 直接対決の2戦目は0対0のドローで、ヤクルトがマジックを3に減らした。その引き分けがもつ意味は、一夜明けのこの日の阪神、ヤクルトの勝敗で変わってくるとみていた。つまり両軍ともが勝っていれば、そのまま進んだのかもしれないが、このヤクルトの逆転負けは、阪神戦の引き分けが尾を引く痛手になって響いてくるかもしれない。逆に言い方は悪いが、もう終わりかもという立場だった阪神は再び「行けるぞ」という気持ちになって、あとの3試合を勝ってなだれ込めばいいだけになったということだ。

阪神対中日 先発し力投する阪神高橋(撮影・前田充)
阪神対中日 先発し力投する阪神高橋(撮影・前田充)

阪神の先発高橋は8回1安打無失点で、すっかり中日打線を手玉にとった。

山田 今の阪神エースが高橋であることに疑いの余地はない。ヤクルト、巨人、中日を相手にした投球をみてきたが安定感がでてきたし、ゲームを支配している。あとは強さ。ただ一言、相手の中日に言いたいのは、すでに新体制の話題などがでてきて影響しているのはわかるし、生きの良い若手が出てこなくて苦心しただろうが、せめて優勝チームが決まるまでは、ベストメンバーで戦うのが球界の礼儀だった。

さて阪神は広島と2試合、中日と1試合を残すのみになった。

山田 大山、梅野らを外して戦う阪神からは、この後のCSをいかに戦おうとしているのかが伝わってこない。でもそれは優勝を公言し続けた矢野監督が後先を考えず、もはやペナントレースのみに集中しているということだろう。勝負は何が起こるかわからない。【取材・構成=寺尾博和編集委員】