藤浪晋太郎はキャンプで実戦を重ねるたびに安定感を増している。この日も課題の抜け球も四球がなく、しっかり指にかかった150キロ超えの真っすぐで打者を圧倒していた。特に目についたのは、トップに入った時に左膝がしっかり固定され、威力のあるボールを投げるための体重移動がスムーズにできていたことだ。悪い時は左膝から下がブレて安定したトップをつくれず、横振りになったりするので制球が安定せず、抜け球も目立った。でもトップが決まると縦振りで上からたたけ、リリースポイントも安定して制球も安定する。結果だけではなく、内容も評価できる2回0封だった。

先発第6の男に着実に前進している。青柳、ガンケル、秋山、西勇、伊藤将の5人は決まりで、残る1枠を藤浪と新人の桐敷が争う構図だろう。桐敷も競争に入ってくる投球を見せているが、プロは2イニングが最長。実績や今の勢いを考えると藤浪が優位だろう。しかも延長12回を想定すると、先発は1イニングでも長く投げられる人がベストで、藤浪はそのスタミナも兼ね備えている。あとはこの先イニングを伸ばしていった時も、今の投球ができるかどうか。開幕ローテを確実にするには、さらに結果を出し続けるしかない。

先発組の伊藤将も貫禄を見せたが、中継ぎ陣は及川をはじめ馬場、小野、湯浅、石井の5人とも不安定で依然、勝利の方程式が全く見えない。もっと不安なのが4年連続12球団ワースト失策の守備で、キャンプで何をやってきたのかと、がっかりするプレーが多々あった。特に5回、二塁カバーに入った木浪が、坂本からのストライク送球をはじいて失点につながった場面は残念過ぎる。次のプレーを予想し、自分にボールが来る準備、想定ができていなかったように映った。

さらに、打球をはじいた小幡にしても、守備はお任せでないといけない選手。実質エラーがヒットになったり、記録に表れないミスも目立ったし、どれもキャンプの打ち上げ前日に見せる姿ではなかった。勝利の方程式と守備陣の整備は、開幕までの喫緊の課題だ。1カ月を切った中で、ベストを模索しないといけない。(日刊スポーツ評論家)

ヤクルト対阪神 5回裏ヤクルト1死二塁、小幡は塩見の打球をエラーする(撮影・加藤哉)
ヤクルト対阪神 5回裏ヤクルト1死二塁、小幡は塩見の打球をエラーする(撮影・加藤哉)