阪神が泥沼状態から抜け出せない。中盤までの投手戦が一転して、守備のミスもあり6回以降にまさかの8失点。1995年(平7)に並ぶ球団ワーストタイの開幕5連敗となった。広島3連覇監督で日刊スポーツ評論家の緒方孝市氏(53)は、野手陣の集中力の欠如を指摘。攻撃につなげるためにも、次の1点を防ぐ意識をもつべきと提言した。【聞き手=田口真一郎】

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広島対阪神 6回裏広島2死一、三塁、中野は末包の打球をエラーし失点する(撮影・加藤哉)
広島対阪神 6回裏広島2死一、三塁、中野は末包の打球をエラーし失点する(撮影・加藤哉)

本来ならばワンサイドゲームになるような試合展開ではなかった。勝敗の分かれ目でいえば、マルテへの強襲打や中野のエラーで逆転された6回だが、まだ2点ビハインドだ。十分に逆転できる状態で、阪神ナインに集中力が途切れたように見えたのは残念だ。

7回のマクブルームの右中間への当たりは、センター近本とライト佐藤輝がお見合いして、躊躇(ちゅうちょ)しているように映った。8回には大山が松山のボテボテの打球を悪送球。その後には佐藤輝が本塁への送球を浮かせてしまい、二塁進塁を許した。低く送球していれば、カットしてアウトも狙えるはず。

失点は投手だけの責任ではない。投手を含め、チーム全体で次の1点を絶対に防ぐという気持ちは必要だ。今季は開幕から逆転劇が多い。実際に阪神も開幕戦でヤクルトに逆転負けを喫したから、分かるだろう。2点差や3点差なら、終盤に逆転できるチャンスはある。流れが悪いのは分かる。それでもシュンとするのではなく、次の1点を絶対に防ぐんだ、とチーム全員で守るべきだ。

阪神は打つだけの選手じゃなく、佐藤輝や大山ら守備能力の高い選手がいる。9回まで集中力を保ち、コツコツとやる。その結果、負けが続くのは仕方がない。何もファインプレーをしろ、というのではない。ゲームセットまで何が起きるか分からない。こういう姿勢を見せないと、1勝は遠い。勝ちは向こうからはやってこない。ラッキーで転がりこんでくるものではなく、つかみとるものだ。本来ならば、ワンサイドゲームになる試合ではなかった。今の状況を打破するには、そういう気持ちが必要だろう。

最終回には1番近本が出塁し、4番佐藤輝がかえした。1、2番の出塁が阪神の得点パターンだ。これをもう1度やっていかないと。調子どうこうではなく、守備で集中力を保てば、打席につながる。打席に立てば、集中力が出てくるというものではない。いい守備を見せた後は、打席でも集中できる。野球とはそういうものだ。今後、矢野監督も大胆に手を打ってくるだろう。阪神らしい攻撃ができれば、得意の機動力も生かせる。当然のことだが、選手がいかに勝利への気持ちを見せるか。集中力の持続が1勝につながる。

広島対阪神 9回表阪神2死二塁、ロハス・ジュニアの三振で試合終了。左から2人目は矢野監督(撮影・加藤孝規)
広島対阪神 9回表阪神2死二塁、ロハス・ジュニアの三振で試合終了。左から2人目は矢野監督(撮影・加藤孝規)