プロ野球が開幕して、私がひそかに期待しているのは、12球団で新しい捕手の台頭はあるのか、ということだ。
後述するが、捕手は評価を上げることが他の野手に比べ困難な特殊ポジション。ゆえに、新しい力が芽吹くことに、厳しくも温かい視線は常に持っていたい。中日の石伊は今季初スタメンで、ディフェンス面での確かな技術を感じさせてくれた。
先発柳を巧みにリードしていた。球種が豊富な右腕を、特定の球種に偏らずまんべんなく、かつ緩急を駆使していた。1点ビハインドの6回1死三塁。岡本には初球から4球連続で内角を攻めた。5球目は外角へスライダーで目線を外に広げさせておいて、最後はフォークで腰を引かせての二飛。
勝負球へのプロセスを描きつつ、臆することなく内角を使った。及第点と言える。さらにブロッキングもいい。しっかり前にはじいている。さすが日本生命を経てプロ入りしただけのことはある。
スローイングでは4回、柳が岡本にモーションを盗まれていたが、それでも捕ってからの送球動作と制球は十分に通用する。
4回と6回に岡本、キャベッジに完全にモーションを盗まれた。柳が足を上げる前にスタートしており、クセがあるのかもしれない。こうした点は捕手としては見過ごせないと感じていると8回、3番手の左腕橋本とのバッテリーで、1死一塁でしっかり走者キャベッジにけん制を入れていた。
私は見ながら「そうそう、分かってるな」と言葉が漏れてしまったが、捕手としての観察眼も学習能力も十分に備えているなと、感じさせてくれた。
石伊は8回の第3打席で代打を送られた。ある意味、私にとっては理想的な初スタメンでの結末だった。そう、冒頭で触れたように捕手は自身のプレーを、他力でなく評価されるのは打撃だけ。守備面は投手の力量に左右され、現に盗塁ではクイックの質に大きく影響される。
つまり、いくら配球で最少失点に抑えても援護がなければ負ける。勝つか、打つか、そのどちらかでなければ評価されない捕手の宿命を、代打を送られた中で、よくかみしめてほしい。
試合終盤に代打を送られる捕手は正捕手ではない。単なる1番手捕手でしかない。ディフェンスで一定のレベルにある石伊は勝負できる立ち位置にある。だから打つしかない。そこだけを目指してほしい。未来の侍ジャパンも夢ではないのだから。(日刊スポーツ評論家)




