ソフトバンクA組の野手陣が快音を響かせるアイビースタジアムで、10年目を迎えた釜元の間近でスマホを構えて動画を撮影している人がいる。一瞬、スタッフかな? と思ったら、なんと王球団会長だった。

ナインの練習を見つめる王球団会長(撮影・岩下翔太)
ナインの練習を見つめる王球団会長(撮影・岩下翔太)

両足を開き、両手でしっかりスマホを固定してロングティーに汗を流す釜元のスイングを撮り続けているではないか。時折、釜元に話しかけ、打撃のアドバイスも行っていた。今キャンプ中に左肘の使い方を指導していたが、キャンプ終盤に来ても指導熱は相変わらず。フリー打撃のケージに釜元が入ると、再び自らのスマホを取り出し、秘書に撮影させていた。

「いやあ、力みました」。練習後、被写体となった釜元は汗を拭いながら苦笑いを浮かべた。そりゃ、そうだろう。長年、キャンプを見ているが、王会長が自らスマホを取り出し、選手を撮影するのは初めてのことだ。「会長からは体が前に突っ込まないように言われています。今はいい感じで打てていると思います。動画はすぐに送られてきました。ありがたいです」。釜元は感謝しきりだった。撮影された動画はすぐさまメールで釜元に転送されたという。

前日(20日)の紅白戦では尾形から右翼越えの2点適時三塁打を放ち、打ち込みの成果も披露した。自主トレは選手会長の中村晃とともに長崎で振り込み、今キャンプでも黙々とバットを振っている。開幕1軍の外野手争いは厳しい。23日からは計5試合の対外試合が組まれており、キャンプ打ち上げ(26日)までの「練習日」は実質的にはこの日が最後だった。「僕も負けられないと思っているので、これからは結果にこだわっていきたい」。王会長から送られてきたスイング動画は釜元にとって「宝物」となろう。10年目の開眼へ-。あとは自らのバットで「結果」を出すだけだ。【ソフトバンク担当 佐竹英治】