時間にして1分もかからない次の駅で、ガラリと街の顔が変わる。山手線の魅力であり、東京の縮図でもある。

韓国出身のパク・サンボムさん(47)は新大久保の界わいを「日本に来た、私たちみたいな人にとってはホームのような場所」と説明する。所属する草野球チームの打ち上げを行う際によく訪れる。

「コリアンズ」はその名の通り、日本で暮らす韓国人で構成されている。1998年(平10)結成でメンバーは27人。うち26人が韓国人だ。最年長は55歳、最年少は20歳。投手のパクさんは印刷デザインの会社を経営している。「留学生にとって右も左も分からない中、同じ国の人と交流して安心感があると思う」。異国の地で、頼れる場にもなっている。

高校卒業後に兵役に就き、そこで日本語を勉強する先輩に出会った。勧められて独学で勉強し始め、退役後も磨きたくなった。「ちゃんと勉強するなら本場で」と留学を決意。日本で就職し、来日27年になる。

母国には部活の概念がない。球児が甲子園で戦う姿は新鮮で、野球にのめり込んでいった。「みんなが甲子園を目指している。日本語がよく分からなくても、野球は分かる。横浜高校の松坂選手を見て、すごいなと思いました。今では韓国のプロ野球選手より日本の選手の方が詳しくなっちゃいました」と屈託なく笑った。

コリアンズ含め、韓国人が主体となっている6チームで構成される「東京韓人リーグ」がある。そのリーグ選抜と、日本の草野球リーグ選抜による「日韓戦」もこれまで3度開催してきた。ただ楽しいだけの野球なのに…日韓の関係が影を落とすときもある。

「業績が悪化したりして、野球どころではなくなる。野球は野球の集まり。私たちだって日本の野球を勉強するし、学ぶべきことも多い。政府間でもめることはあるけど、野球人は同じ仲間として交流したい」

イチローを尊敬している。09年のWBC決勝、韓国を競り落とした適時打を鮮明に覚えている。「インタビューを聞いていても哲学者みたいな言葉。いつかイチローさんと一緒に草野球をしたいんです」。

駅の数だけ、駅の色に従って野球がある。【湯本勝大】