整列を終えた2人の主将は右手で握手を交わし、空いた左手でポンポンと2度肩をたたき合った。

 「頑張れよ」(増田)

 「また夏な」(中川)

 明秀学園日立(茨城)増田陸主将(3年)と、3季連続レギュラーとして甲子園に出場する大阪桐蔭・中川卓也主将(3年)。ともに大阪福島シニア出身で、中学3年時は「1番遊撃」増田、「3番二塁」中川で二遊間を組んで全国8強入りした。この日はともに遊撃で先発。互いにプロ注目選手になって甲子園で再会した。

 増田は、中川のことを常に追い掛けてきた。中学時代、ライバルが毎日バッティングセンターで練習すると聞くと、負けじと連日バッティングセンターに通った。高校では寮の自室に「打倒中川」と張り出した。昨夏の甲子園で、中川が勝利目前の9回2死一、二塁から一塁ベースを踏み外し、直後に仙台育英にサヨナラ打を浴びた試合はテレビ観戦。増田は「中川でもミスはするんだと、安心した自分がいました」。それほど絶対的な存在だった。

 2人を指導した同シニアの中尾学監督(37)は「中川は当時からキャプテンでチームの要。注目されていた選手。増田は守備の人。陰に隠れた存在で、中川に怒られながら、負けたくないというライバル心はすごかった」と懐かしむ。

 2人は今年、正月の大阪福島シニアのOB戦で顔を合わせた。背番号「5」で三塁を本職としながら遊撃も任される中川は、増田に守備のアドバイスを求めた。「ポジショニングやゲッツーの足の運びを聞きました。とにかく守備がうまい」と相談。増田はライバルに頼りにされ、意気に感じた。中尾監督は「増田の中に、中川に認められたい部分がある」と言う。

 アルプススタンドでは、大阪福島シニアの選手が40人ずつ一塁側、三塁側に分かれて2人の先輩に“平等”に声援を送った。「1番遊撃」の増田は1回の初球、大阪桐蔭・根尾のスライダーを芯でとらえたが中飛に倒れた。3回には先制二塁打を放った中川に、二塁付近で「ナイスバッティング」と声を掛けた。自身は4打数無安打に終わり、試合も敗れた。「やっぱりいいバッター。中川のすごさを感じて、また絶対負けたくないと思いました」。

 センバツ連覇に突き進む中川は「今日はゲッツーはなかったけど(増田に)見せたかった。意識はしましたが一番はチームが勝つこと。個人ではない」と引き締める。増田は茨城に戻り、中川は優勝候補の主将として、それぞれのやるべきことを追い求める。【前田祐輔】