<イースタンリーグ:日本ハム0-2ロッテ>◇3日◇鎌ケ谷

ファームに特化して取材を続ける田村藤夫氏(62)が、日本ハムのドラフト2位、高卒ルーキー有薗直輝内野手(19=千葉学芸)のバッティングに3つの要素を見た。力強いスイングと、状況を考えた工夫と、ルーキーらしいもろさ。それぞれに中身のある打席だった。

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鎌ケ谷には冷たい雨が降っていた。傘を差しながら見ていたが、1番指名打者有薗の4打席を見て、今日は見に来て良かったと思える内容だった。

第1打席は右腕河村に対し初球まっすぐをフルスイングでファウル。1-1から3球目の外角まっすぐをまたフルスイング。打球は右翼ポール右へ切れたが、飛距離は十分。なかなかパンチ力がある。4球目は内角に抜けてきたおそらくフォークに詰まり、遊ゴロ。内角に抜けてくるフォークをミートするのは難しい。この打席では、まっすぐに対するスイングは非常にシャープでタイミングも合っていた。

第2打席は初球内角のまっすぐをフルスイングで、三塁線を破る二塁打で、出塁。この打席でもまっすぐに対するスイングには迫力がある。そして第3打席は無死一塁の場面。初球フォークがボール。2球目もフォークが内角に来たが、それを一、二塁間へおっつけるようにして運び、右前打となって無死一、三塁とチャンスを広げた。

私はこのバッティングにおやっと感じた。前の2打席からの流れではまっすぐを待ってフルスイングをしてもおかしくはない状況だった。しかし、有薗は明らかに右方向を意識したスイング。こんなバッティングをするんだなと、感じた。

当然、引っ張るのかなと想像していたが、有薗の意識は右方向にあった。サインが出ていたとは思わない。これが無死二塁ならば、走者を進めるための右打ちというサインは出たかもしれないが、無死一塁では考えづらい。

私の考えだが、有薗は無死一塁という状況を踏まえて、1死二塁を頭に入れて打席に入っていたのだろう。ルーキーでこういう状況判断できることが意外であり、冷静で、視野が広いなと感じさせる。第1、第2打席では、まっすぐ待ちで全力で振り切るルーキーという印象が、ちょっと変わった。これで無死一、三塁となったが、得点にはつながらなかった。ただし、有薗は自分の仕事はした打席だった。

そして、何よりも記憶に残ったのが第4打席だった。2死走者なし。1発を狙ってもいい場面。投手は変わって右の東妻。この日149キロを出し、球威はあった。初球高めまっすぐ148キロがボール。2球目外角まっすぐ144キロのストライクを見逃して1-1。3球目、投げた瞬間にボール球と分かる外角へのスライダーを空振り。1-2から、4球目も外角スライダーを空振りで三振。

表現は悪いが3球目も4球目もくそボールだ。特に3球目は明らかなボール。4球目もボールゾーンからボールになるスライダーで、これもボール球だった。しかし、有薗は3球目も、4球目もまっすぐを予想して思い切り振りに行っている。特に4球目はまっすぐと決め付けているくらいの勢いだった。高卒ルーキーだ。こんなものだろうと感じる。しかし、こんなものというのは、レベルが低いという意味ではない。

有薗に足りないものは経験だ。プロのバッテリーとの対戦だ。捕手とのだまし合いと言い換えることもできる。恐らく、相手ロッテの捕手は3球目の空振りを見てこう考えたのではないか。有薗はスライダーを空振りし、この球種を意識の中で引きずるだろう。変化球へのマークという意識が強くなる。そこで、裏をかいてまっすぐを要求したくなるところだが、有薗はまだこうした経験がない。だからタイミングがまるで合っていないスライダーを続けたところで勝負あった。

しかし、私はこの空振り三振は、有薗に多くのことを学ばせるチャンスだと感じる。ここから学習できるか、深く考えずにやり過ごしてしまうか。成長するためのヒントがあるとぜひ気付いてもらいたい。

私は、3球目のスライダーを空振りした後、4球目にストレートを投げていれば、有薗は打っていたとイメージしている。あくまでも私の勝手な想像だということは断っておきたい。

第3打席までの河村よりも、明らかに東妻の球威は勝っていた。そのまっすぐに力負けしないよう、準備していた有薗の考えは間違っていない。東妻のスライダーは切れており、有薗からすれば148キロを見せられてから、キレのあるスライダーではなかなか対応しきれない。1-2と追い込まれ、まっすぐ待ちの変化球対応で臨みたいところだが、有薗の頭の中にはまっすぐしかない。直前のスライダーの軌道も関係なく、4球目も思い切ってスイングして空を切ったと感じた。

若手はこれでいい。私はこのリポートの中で何度も書いてきたが、思い切って振ることは、何よりも大切だ。若い選手で変化球を巧みに打つ選手も増えてきた印象を受けるが、まずは第4打席の有薗のように、ここは1発を狙っていい場面で思い切って振れる、相手バッテリーに警戒されるスイングをする、これが強打者への出発点になる。

特に、有薗のような右のスラッガーとして将来を期待されるバッターは、今はこのスタンスでいい。

振って三振して、そこから学ぶことだ。仮に第4打席でヒットが出たとしても、気分よく3安打で終わり、有薗にそれ以上の教訓、学びはないかもしれない。しかし、この三振には、貴重な学びが詰まっている。

有薗はプロの世界で、先につながるための三振をしたということだ。ここから学習をして、この三振が大切な肥料になったと思える日が来ることを、私は楽しみにしている。(日刊スポーツ評論家)