取材先の埼玉大会がゲリラ豪雨で長引き「ハシゴ取材」はできず。神奈川大会決勝はネット中継で追った。横浜は敗れた。ただ、椎木卿五捕手(3年)がサイクル安打を達成し、心の中であっぱれを送った。

7月5日の開会式。170チーム近くが、入場行進に備えて待機する場外は“同窓会”だ。違うユニホームの選手たちが、小中学生時代の旧交を温める。

横浜だけ違った。全員で木陰に集まり、自分たちから他校に接しようとはしない。椎木に尋ねた。「もう戦いは始まっているので。そういう意味を込めて、です」。ひたすらに優勝だけを求めていた。

椎木にとっては、とりわけ。5月に主将を外れた。直前の福井遠征でスタメンを外れ、取り巻く空気の変化は感じていた。「キャプテンとしての物足りなさ、というのは自分の中でも少し感じていました」。

プロ注目の強打者だ。村田浩明監督(38)は椎木をプレーに専念させようと、あえて次期主将候補の筆頭だった阿部葉太外野手(2年)をひと足早く、2年生ながら主将に据えた。

椎木としても悔しくないはずがない。「悔しかったです。ものすごく。そこはでも、人のせいにしてもしょうがないので。自分に厳しく。自分の悪いところ、足りないところをもう1回洗い出して」。

両親には割とすぐに電話した。「その時は、はい…泣きましたね」。

周囲の3年生は「結局はおまえが打ってくれないと夏は絶対に勝てないから」とプレーでの活躍へ励ましをくれた。「この悔しさを絶対に夏にぶつける」。そう誓った。

そうしてチームを決勝へ引っ張って、右打者なのに右翼への本塁打…を含めたサイクル安打。これ以上のない貢献度で、監督の期待にも応えてみせた。

だからこそ悔しさもひとしお。監督も阿部葉も皆、椎木のことを「優しい」と言う。開会式前、他校の選手には一線を引いても、記者が目の前を通ったらわざわざ「こんにちは!」と周囲も含めたあいさつを先導してくれる、そんな捕手らしい気づかいと気付きの18歳。

「とにかくこの夏は、最後までやり切りたいです」

6月、そう言っていた。打って打って、やり切れただろうか。猛烈な突風が暑さを置き去りにしていった大宮公園で、スマホ画面に椎木の涙が見えた。【金子真仁】

横浜対東海大相模 9回表横浜2死、中前打を放つ椎木(2024年7月24日撮影)
横浜対東海大相模 9回表横浜2死、中前打を放つ椎木(2024年7月24日撮影)