苦手の巨人高橋優貴に、また、やられた。中野拓夢の1安打だけで無得点。7回まで実にあっさり、簡単に抑えられた。この日で入れ替わる可能性はなかったとはいえ、一騎打ちの「首位攻防TG戦」だ。それが、この内容ではハッキリ言って情けない。

「プロである以上、結果で示していかないとダメだし。向こう(高橋)もすごくよかったという風には見えなかったんで。まだ、やれることはある」

指揮官・矢野燿大は虎番記者に取材にそう答えたようだ。同じ相手に4敗すれば、悔しさも募るだろう。しかもしのぎを削る巨人の投手だ。「西が頑張っとるやろ! なんとかせんかい!」。闘将・星野仙一なら間違いなくベンチで叫んで扇風機に八つ当たりしていた試合展開だった。

だけどここで少し思うのはベンチとして「打倒高橋」に関し、やれることをすべてやったのか、徹底できていたのかということだ。

過去の対戦成績を見れば高橋を打っているレギュラーは梅野隆太郎(6打数2安打=3割3分3厘)、近本光司(13打数4安打=3割8厘)といったところ。ほぼ全員が苦労しているのは間違いない。

そんな中、3打数1安打、その1安打が本塁打だったベンチメンバーがいる。北條史也だ。もちろん、その成績で「相性がいい」とはさすがに言えない。それでも高橋にすれば「本塁打されたバッター」として記憶に残っているはずだ。

糸原健斗はこの日で高橋相手に10打数無安打になった。苦手の左腕をなんとかしてやろうと思えば、その北條をスタメン起用し、気持ちの面だけでも揺さぶりをかける策もあった気はする。結果が出たかどうかは別に「ベンチ全体で戦う」というのは、そういうことでもあると思う。

好調の裏付けで…というより当初の基本ラインとして大山悠輔を4番に戻すなど矢野は「選手に期待する」起用が多い。監督にはタイプがあるし、それでここまで首位を走っているのだから、成功している部分は大きいと言える。

現在はレギュラーが固定され、それが今季の強みにもなっている。その面々に期待するのも当然かもしれない。それでも時には思い切った策というか相手をかく乱するような手も見せてほしいと思う。相手は名将・原辰徳だ。いろいろな引き出しを見せて「必死のパッチ」で戦ってほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対巨人 3回裏阪神無死、中野は中前打を放つ。投手は高橋(撮影・加藤哉)
阪神対巨人 3回裏阪神無死、中野は中前打を放つ。投手は高橋(撮影・加藤哉)