神宮球場のヤクルト戦が雨で中断しているとき、東京ドームで巨人指揮官・原辰徳が最終戦を終え、あいさつしていた。「辞任します」-。指揮官・岡田彰布とは現役時代からしのぎを削った間柄だ。12球団でも60代の監督は2人だけ。岡田にはそれなりに思いがあるはずだ。
その岡田阪神今季最終戦のサヨナラ負けに「しゃあないな」と話した。そこに虎番キャップたちから原辞任関連の質問が飛ぶ。「あと1年契約あるいうから。びっくりしたけどなあ」。だが、やっぱり岡田だと思ったのは「来年も(好敵手として)やりたかったのでは」という質問に答えたときである。
「何がやりたいんや。やりたいとかじゃなくて。勝負やないか」。笑いながら、そう話した。ライバル同士の奇麗事ではなく、どこまでも「勝負」。そんな姿勢が感じ取れたのである。
今季最終戦だ。大竹耕太郎の最高勝率にもう少しで手が届く展開。しかし最後に逆転され、5人のタイトルホルダーを生んだものの祝福ムードではなくなってしまった。優勝しており、すでに消化試合だが、もちろん個人記録が重要な部分はあるし、この時期、1試合1試合は重要だろう。やはり悔しさは漂った。
抑えの岩崎優以外の投手なら「もっとプレッシャーかかるやろ」と岡田は言った。その岩崎が打たれた。ピンチを広げた場面には佐藤輝明の失策もあったが微妙な打球。そこも含めて仕方がない結果かもしれない。だが、そこまでの流れはよくなかった。
1点リードの9回、無死一、二塁から坂本誠志郎が犠打を決められず、バスターエンドランに出たが空振りし、二走・佐藤輝が刺される併殺。今季、あまり見た記憶のない攻めが出てしまった。さらに5回。2死から途中出場の島田海吏が四球を選んだ。続く打者は単独での最多安打記録がかかる中野拓夢。一塁にいればヒットゾーンが広くなる状況だが盗塁を企て、アウトになっている。
「らしくない」戦いで最終戦を終えてしまったのは事実だろう。これで、もう18日のCSファイナルまで真剣勝負はない。この日を「あの試合で悪いものが出た」と言えるのか。それとも万が一にも「あれからおかしくなった」と言わざるを得ない状況になるのか。すべてポストシーズンの戦いにかかっている。まさに「勝負」なのだ。(敬称略)
【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)