新指揮官・藤川球児の下、新たな戦いに挑む阪神は過去に例を見ない“状況”だ。そう書けば大げさかもしれないが、阪神球団史はもちろん、プロ野球史に名を残す監督の親族が同時に2人もコーチ陣にいる。これは異例だろう。
まず外野守備兼走塁チーフコーチ・筒井壮である。言わずとしれた闘将・星野仙一の姉の息子、つまりおいっ子である。以前から虎党にはおなじみだろう。中日、阪神でプレーした後、06年で引退。07年から阪神で指導者を務める。
そして、もう1人。今季から1軍スタッフとなったバッテリーコーチ・野村克則だ。こちらは知将・野村克也の実子。ヤクルトから阪神、巨人、そして楽天と現役生活を過ごし、やはり06年限りで引退した。在籍全球団で指導者歴があり、阪神では3年間、ファームのコーチを務めてきた。
「野村の子」と「星野のおい」…。いまどき「親がどうした」「親類がどうした」という時代ではないかもしれないけれど「なんだかすごいなあ…」と、個人的には思ってしまう。
この2人、他にも共通点がある。明大で先輩、後輩ということだ。プロで有名な親族2人が在籍していた当時の明大がどんな雰囲気だったのかは知らないが後輩の筒井から、こんな話を聞いた。
「学生のとき(先輩の)克則さんにはよく食事に連れていってもらいました。そういうとき、ボクは必ずおじ(星野)にあとで電話するんですよ。『ごちそうになった』って。すると『そうか。でも、あまり世話になりすぎるなよ』という感じで言われましたね」
星野からすれば球界の先輩である野村とはいえ、それぞれの立場があり、微妙な感じだったのかもしれない。周囲に配慮する人だけに気を使っていたのだろう。筒井から聞いたそんな話を先日、克則にしてみた。
「そうなんですか? まったく知らなかったなあ。ボクは別に(父親に)そんなことは言いませんでしたけど」。先輩は、そういうものかもしれないがさっぱりした性格を感じさせ、笑みを浮かべていた。
51歳の克則と50歳の筒井。若い1軍スタッフの中で2人だけ50代だ。「いろいろ教えてくれますよ」。2人について球児に聞いたとき、頼もしそうに話していた。「闘将」と「知将」のエキスを引き継ぐ“異色のコンビ”が新たな阪神を支えていけば、面白い。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




