向上が、4点差を逆転して7回コールド勝ちを収めた。1回に2点、4回にも2点を失い、0-4から追う展開の4回裏。先頭から2者連続死球とバントで得た1死二、三塁のチャンスで、7番・小林勇士捕手(3年)が3ランを放った。

 「自分たちの野球ができていなくて、焦りもあったのですが、1つのプレーでチームが変わると思った。あそこの場面で自分が1本打てば変わると思った」

 まずは1点と打席に立った。甘く入った初球を振り抜き、左翼スタンドに運んだ。「通算10本目で公式戦では初めての本塁打です」と、100点満点の笑顔で言った。小林の言葉通り、1点差に迫る3ランを合図に、向上打線の力みが消えた。あっという間に6点を奪い、逆転に成功した。5回に4点、6回も2点を追加。終わってみれば7回コールドと圧倒した。

 小さな善行が本塁打を呼んだ。小林が、夏の大会に向けて取り組んだのがゴミ拾いだった。「野球の技術より、生活面でイマイチ良くなかった。古典で赤点を取ってしまったんです。だから、授業やゴミ拾いをちゃんとしようと。今日も人一倍ゴミを拾ってきました」。自宅最寄り駅の駐輪場や、学校最寄り駅から徒歩20分の道のりでゴミを拾うのが日課という。この日も「プラスチックゴミを10個以上拾いました。監督から、そういうことをしっかりやれば、結果が出ると言われています」と胸を張った。古典・赤点・30点が巡り巡って、逆転起点の3点本塁打に。日ごろの心掛けが、チームを救う一振りにつながった。