ハラハラの勝利だった。東海大相模(北神奈川)が逆転サヨナラで4強に進出した。2点差の9回無死二塁から、プロ注目の森下翔太外野手(3年)が左越えに高校通算57号となる起死回生の同点2ラン。その後チャンスを広げ、1死満塁から8番井上恵輔捕手(2年)の二塁内野安打で勝利した。次戦は27日、今春ともにセンバツ出場した慶応と決勝進出をかけて戦う。

 9回無死、森下はネクストバッターズサークルで前打者山田拓也内野手(3年)の左越え二塁打を見ていた。「前の打席は力が入って打ち上げた(左飛)のでリラックスしていこう」。冷静だった。打席に入ると三塁手が下がったのに気付いた。「セーフティーバントも考えたが、自分で打ってチームに貢献したい」と、1-2からのインコース高めの変化球を思いっきりスイング。滞空時間の長い同点弾で一塁側スタンドを総立ちにさせた。

 門馬敬治監督(48)は試合前に「この試合は技術ではなく心の勝負になる」と選手たちに話していた。ところが暴投や邪飛の落球、ホームのカバーに入っていないなど自分たちの「想定外の心のミス」による失点が続いた。負けゲームの展開。門馬監督は「もし負けていたらやるべきことをやっていないミスが敗因だったと思う。そのことを(試合後の)ミーティングで選手に話しました」と厳しい表情で語った。

 それでも打線は無安打の1番小松勇輝主将(3年)、1安打止まりの4番西川僚祐外野手(1年)を2番山田、3番森下の3年生がマルチ安打でカバーした。森下は「小松が打てないときには自分たちがつなぐ打撃でカバーし、プレッシャーがかかる場面で打てなかった西川も、3年生が活躍することでフォローする」と力強く語った。劣勢の中でも他の選手よりも大きな声で「あきらめるな」と叫び続けた。「負けを覚悟したか」の質問に森下は「7回に勝ち越されてもまだ3回あると思ってチームのために声を出して盛り上げました」と言った。

 次戦はともにセンバツに出場した慶応との対戦。森下は「1回死んだ身。練習量は誰にも負けてないので、この試合は1回忘れて新たな気持ちで挑みたい」。東海大相模は、この試合を糧とする。【松熊洋介】