北海道胆振東部地震のため中断していた札幌地区予選が10日に再開し、札幌円山、麻生で計6試合が実施された。当初5日に予定されていた2回戦の北広島-札幌山の手は、台風21号の影響で1日順延後、地震の影響も受け、5日遅れでの実施となった。球児は停電、断水などを経験し、厳しい環境の中、グラウンドに立った。10日開幕予定だった函館地区は、雨天のため今日11日に順延となった。

誰もがもどかしさを抱えながらの再出発となった。札幌山の手を下し3回戦進出を果たした北広島の和田大河主将(2年)は、笑顔なく、振り返った。「こうやって野球がまたできたのは周りの人たちのおかげ。もっとつらい人もいる。勝っても負けても少しでも頑張っている雰囲気が出せたらという気持ちでプレーしました」。勝敗抜きにした思いが、胸の内にあった。

当初5日に2回戦を行う予定も、台風21号の影響で交通機関が乱れ、チームが試合時間に集合出来ず、6日に順延になっていた。強風でグラウンドのダッグアウトを覆う屋根と壁が吹き飛び、周囲の樹木もなぎ倒され練習できない状況だった。さらに翌日未明、今度は地震が襲い6、7日は自宅待機。8、9日も校内に入ることが禁止された。池上健太二塁手(2年)は「もう野球ができないのではと思った」と振り返った。

和田主将は、江別市の自宅が7日朝まで断水。停電も同日午後10時まで続いていた。「暗くなったら寝て、明るくなったら起きるという生活。昼は給水車から水を運んで。食べ物を買う店も閉まっていて、家にあったカップ麺やお菓子を食べていた」。育ち盛りの球児たちにとっては厳しい日々が続いていた。

札幌山の手の原昇平監督(35)は地震後、負傷していた右足首にギプスをつけながら、寮生のため札幌市内のコンビニエンスストアに食料を探し回った。「みんな状況は一緒。こうやって試合ができることに感謝です」と静かに話した。

全道大会の組み合わせ抽選日が20日。道内最多57校のマンモス地区の全試合を消化するため、札幌地区としては苦渋の決断を下した。工藤高司事務局長(60)は「この後、どうなるかも分からない。また地震がきたらということも考えた。このタイミングでの再開は正直、心苦しかった」と言う。天候悪化なども想定し、5日ぶりのリスタートに踏み切った。

今日11日は、震度7の揺れに見舞われたエリアが含まれる室蘭地区など6地区が開幕する。【永野高輔】