<高校野球千葉大会:木更津総合7-3松戸国際>◇24日◇準決勝◇QVCマリンフィールド

 あとひとつ-。木更津総合が、エース黄本創星投手(3年)の奮闘で、甲子園に出場した08年以来4年ぶりの決勝進出を決めた。黄本は最速143キロの直球を駆使し、松戸国際打線を手玉に取った。126球、10奪三振の力投で、昨秋、今春と続けて県大会で敗れた相手をねじ伏せた。今日25日、3度目となる夏の甲子園をかけ、柏日体と対戦する。

 ぐっと喜びを抑え込んだ。黄本は最後の打者を三振に打ち取ると、笑顔も見せず無表情のままマウンドを降りた。「心の中ではうれしかったですけど、まだ明日がある」と淡々と振り返った。宿敵撃破は通過点にすぎない。勝利の余韻に浸る間もなく、瞬時に気持ちを切り替えて整列に加わった。

 苦い思い出を自らの右腕で拭い去った。松戸国際は昨秋、今春と続けて県大会で敗れた因縁の相手。春の対戦では7回2死満塁から救援登板し打ち込まれ、わずか2球で降板させられた悔しさがある。それから頭の片隅には常に“松戸国際”の4文字があったという。走り込みのときも、他チームとの練習試合後でも、ふとした時に自分のふがいなさを思い返していた。「こいつらにだけは絶対負けてはいけない」と決意を持って臨んだ一戦。この日は最速143キロの直球を主体に、攻めの投球で10個の三振を積み上げた。

 リベンジを果たすために、秋から体のキレを意識したトレーニングが実を結んだ。グラウンド近くにある、アップダウンの厳しい1周約5キロのダム周りを毎日自転車で4周。約20キロを50分以内に走り切ることを目標とし、下半身をいじめ抜いた。結果として、食事の量を減らさずに93キロ→82キロのシェイプアップに成功。約1年の間に球速は10キロ以上速くなり、五島卓道監督(58)も「どっしりしてきたね」と風格を感じ取っている。あの時の悔しさを胸に刻んでいたからこそ今がある。

 次はいよいよ決勝戦。帽子のつばには“自分は甲子園で優勝する投手”と書いてある。「書くことで実現できると思っているから」と頼もしい一言。あとひとつ。自身の投球でチームを栄光の入り口に導いてみせる。【松田直樹】