<高校野球北北海道大会>◇19日◇1回戦

 北北海道では、帯広農がエース福島慎也(3年)の16奪三振の好投で北見柏陽を2-0で下した。

 181センチの大きな体をくの字にして、右横手からムチのように腕をしならせると、バットは空を切り続けた。帯広農のエース福島が9回1安打16奪三振と圧巻の投球を見せた。決め球のスライダーは打者の手元で大きく曲がり、直球は捕手の構えたミットに吸い付くように収まった。16個の「K」の山を量産し、南北大会の1試合奪三振記録にあと2つと迫る快投。「三振の数は、これまでで最多だと思います。今日は打たれる気がしなかった」と誇らしげに話した。

 外野には1度も打球が飛ばなかった。大きな体に長いリーチ。球持ちが長く、腕の振りは力強い。その割に直球のスピードは130キロ前後とそれほどでもなく、その微妙なアンバランスさでタイミングを狂わせた。許した安打もバント安打の1本のみ。北見柏陽打線はバットに当てるのにも苦労した。3三振を喫した川又は「タイミングがつかめなかった。イメージと打席に入ったときは違った」と振り返った。大久保聡彦監督(48)は「初めて対戦する打者はなかなか打てないと思う。これくらいは投げてくれると思っていた」と想定内を強調した。

 2年生エースとして臨んだ昨夏は、北大会の1回戦で釧路江南に9回サヨナラ負け。横手投げの生命線である制球力がアップし、投球が安定した。地区代表決定戦では白樺学園に延長10回を投げ完封勝利。地区大会からの無失点を25イニングに伸ばした。

 実家はジャガイモなどをつくる畑作農家で、幼少期から1箱10キロほどの野菜の箱詰めなどを手伝った。多いときで1日に約500箱。「腕力とかが鍛えられました」と話す。

 最後の夏に完全燃焼する。兄斉さんは2年前に卒業した同校野球部OB。最後の夏は地区予選で敗退した。「兄からは毎日『がんばれよ』とだけメールが来ます」。兄の果たせなかった夢も背負い、恵まれた体格を生かした横手投げで北大会の頂点を目指す。【石井克】