完全復活への第1歩だ。広島丸佳浩外野手(28)と鈴木誠也外野手(23)が10日のヤクルトとのオープン戦(マツダスタジアム)で、そろって実戦守備に就いた。「3番中堅」と「5番右翼」で今年初めて同時出場。右中間を割られる場面もあったが、不安を感じさせない動きで復活へ大きな1歩を踏み出した。打撃でも2人で4打数3安打。開幕へ向けて、攻守の要が本格復帰を果たした。

 2万5574人が詰めかけた今年初の本拠地でのオープン戦に、見慣れた光景があった。中堅には丸、右翼には鈴木。開幕まで3週間を切り、鈴木が右足首を負傷した昨年8月23日DeNA戦(横浜)以来のコンビが実現した。

 右肩の可動域の問題でスローイングに制限をかけながら調整してきた丸は、今年初の実戦守備も、2つの飛球などを難なくこなした。「これまで守っていなかったけど、そこまで感覚のズレはなかった」。5年連続ゴールデングラブ賞受賞の守りは、わずかなブランクでさびつくはずがない。

 守りから打席に入る本来の流れは、打撃に好影響を与えた。1回は基本に忠実な打撃で、投手の足元を抜く中前打。3回は追い込まれながら外角球にバットを合わせて左翼への二塁打。昨季セ・リーグ最多安打のバットマンらしさ全開の今年初マルチ安打だ。走攻守すべてに高いレベルを求め、プロ野球ゲームに例え「(能力評価)オールSの選手」を目標にしてきた丸にとって、盗塁失敗も含めて大きな前進となったに違いない。

 199日ぶりに実戦守備に就いた鈴木は「緊張しました」と素直に振り返った。3回無死一塁から山崎の右中間へのライナー性の打球にあと2歩ほど届かなかった守備には「あれは僕のミス」と認めた。一、二塁間が空いている状況だったため、右翼線に寄ったポジショニングが災いした。ただ、実戦でしか得られない感覚も、今の鈴木には収穫の1つだ。打っては第1打席で左翼へ二塁打。「次に生かせるようにやっていきたい」と前を向いた。

 ともに攻守の要となる2人の本格復帰に、緒方監督も安心した様子。「オープン戦も残り12試合なんでね。この期間に打つ、守る、走ると、どんどん上げて行ってもらいたい」。開幕へ向けて、3連覇には欠かせぬ頼もしい2人が帰ってきた。【前原淳】