全日本クラブ野球選手権が10日、メットライフドームで開幕した。現役のメジャーリーガーだった野茂英雄氏が03年に設立したNOMOベースボールクラブは西近畿予選を勝ち抜き、10年ぶりに全国の切符をつかみ取った。13年に本拠地を大阪・堺市から兵庫・豊岡市に移転。城崎温泉の支援を受け、旅館に勤務しながら技術を磨いてきた選手たちが、夢の舞台で躍動する。今日11日の1回戦で東北マークス(東北地区代表)と対戦する。

深い緑に囲まれたNOMOベースボールクラブ(以下NOMOクラブ)の本拠地「こうのとりスタジアム」には連日、朝から活気ある声が響き渡る。4強入りした08年以来、10年ぶりのクラブ選手権へ向けて調整は順調だ。沼谷主将は「豊岡に移転して初めての全国。選手の中でも全国大会を経験している選手は少ないので、チャレンジャーとして恐れるものはない。挑戦する気持ちを持って、1戦1戦勝っていきたい」と力を込める。

社会人野球の企業チームが減っていく中、03年に現役大リーガーだった野茂氏が「野球を続けたい選手の受け皿に」の思いで大阪・堺市でNOMOクラブを立ち上げた。05年に都市対抗に出場し、同年のクラブ選手権は初出場初優勝。だが現在のNOMOクラブは当時とは趣を異にする。

拠点としていた堺市の球場が高速道路建設のため閉鎖され、13年から豊岡市に移転した。それまでコンビニでのアルバイトなどで生計を立てていた選手たちは、地元の城崎温泉で働きながら練習に打ち込むことができるようになった。

午前8時30分から午後1時までグラウンドで汗を流すと、午後3、4時からは旅館で勤務する。フロント業務や、布団の準備などを午後9、10時まで行う。コーチ兼マネジャーの杉山栄司氏は「接客などでコミュニケーション能力も上がりますし、人間的にも成長する。支援してくれる方々に喜んでもらいたい、日ごろの感謝を野球で示したいという気持ちでプレーしてくれています」という。

今年のチームも、例年通り基本は守備から。146キロ右腕の北川を中心に、守りからリズムをつくり、打線は横田、近藤らがつないで、つないで少ないチャンスをものにする。社会人新日鉄堺時代の野茂氏の先輩で、設立当初から指揮を執る清水信英監督は「最初にクラブ選手権に出たころはチーム自体も力がありましたし、優勝を意識してやってましたけど、今回は10年ぶり。1戦1戦大事に戦って、結果がついてくれば」と話し、全国の舞台で選手たちの飛躍に期待した。【千葉修宏】

◆全日本クラブ野球選手権 クラブチームを対象とした全国大会で、第1回は1976年(昭51)。今年で43回目を数える。全国各地区の1次、2次予選を勝ち抜いた16チームで争われる。昨年、西近畿地区の和歌山箕島球友会が優勝したため、今年は同地区から箕島球友会とNOMOクラブの2チームが出場する。最多優勝は全足利クラブの10回。