西武が中村剛也内野手(35)の2度にわたる激走で、延長サヨナラ勝ちをもぎとった。延長11回、金子侑の中前打で二塁から全力疾走。際どいタイミングながらも滑り込んで、サヨナラ走者として生還した。

この回先頭で出塁した際、セーフ判定に関してリクエストを呼び込み、楽天に“おかわり”リクエストをさせなかった。チームは今季楽天から初勝利。勝率を5割に戻し、同率で3チーム並ぶ2位タイに浮上した。

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二塁にいた中村は、サヨナラのホームを狙っていた。「2ストライクだったんで、(金子侑がバットを)振ったらゴーという感じだった」。2死でカウントは2ストライク。金子侑が詰まらせふわりと上がった打球にも、迷いなくスタートを切った。三塁を勢いよく蹴り込み、足から滑らせながら左手で本塁をタッチ。サヨナラを足で呼び込んだのは、身長175センチ、体重102キロの中村だった。

そもそも足で勝ち取った出塁だった。その回、先頭で打席に立つと強振した打球は三塁へ。今江が取りこぼして投げ直す中、一塁へ全力疾走。コンマ数秒の差でのセーフ判定に、楽天平石監督からリクエストの要望。リプレー検証の結果は判定どおりだった。ルール上、延長戦でのリクエスト失敗は1度のみ。「とにかく全力で走りました」と大粒の汗を流しながら快走が、次の本塁クロスプレーで相手にリクエストをさせないことにもつながった。

平成では、最多となる6度の本塁打王のタイトルを持つ、希代のホームランバッター。その強打に隠れた走塁センスは、歴代の西武監督が認める中村の武器だ。犠打で二塁進塁した際、代走が出ても不思議ではない場面だったが、辻監督は「中村は打球判断にたけている。その走塁センスにかけました」と動かなかった。その判断が、楽天からの今季初勝利と、同率で3チーム並ぶ2位浮上につながった。

勝利の陰の立役者は、本職のバットでは今季勝負を避けられる場面もあり、13四球で打率2割5厘と伸び悩んでいる。通算本塁打は389本と、過去18人しか達成していない400本塁打まであと11本。「もっと打てるように頑張ります」。次は全力疾走不要のアーチで、ダイヤモンドを1周する。【栗田成芳】