人生はすばらしい物語だ。延長11回1死一塁、ロッテ清田育宏外野手(33)は打球を目で追うことなくベンチに向かって右腕を突き上げた。

打球は逆風をものともせず打った瞬間にスタンドインとわかる8号サヨナラ弾。「やりました! 人生で初のサヨナラホームランで、裏で準備している時に『サヨナラホームラン打ったことないんだよな』とか話していたのですが、まさか今日出るとは思わなかった」と喜びを爆発させた。

空振りで初心を思い返した。本塁打の1球前、カウント2-1からの4球目の外角のスライダーを空振りした。「『だめだ。だめだ』と。あの球をケアしようと思ったら最後に引っかかってくれた」。打った球はそれよりも甘く入ったスライダーだった。

開幕当初は代打で結果を残し、4月末にレギュラーを奪取したがマーティンの加入により再び代打での出場が多くなった。遠征の際にはスタメンではなくともチーム便より早く球場入り。「僕も出たり出なかったりする感じなので、結果を残してまた出られるように頑張らなきゃいけないと思う」と入念な準備を怠らない。

井口監督は「本当にいいところで打ってくれて、決めるところで決めてくれる。集中力も高いしすばらしい」と絶賛した。首位のソフトバンクをたたき借金完済。3位の楽天と1ゲーム差まで迫った。「1つでも多く貯金ができるように1戦1戦頑張りたい」と清田。10年目のベテランが輝きを放った。【久永壮真】