ソフトバンクが待望の主砲復活で、逆転優勝へ大きな勝利をつかんだ。8月30日以来、4番に座った柳田悠岐外野手(30)が決勝三塁打を含む3安打2打点。首位西武とのゲーム差を1に押し戻した。8月末に左膝裏痛から復帰して以降、柳田の猛打賞は初めてで、3月31日以来約6カ月ぶり。23日の勝敗次第で、首位奪回、優勝マジック再点灯のケースがでてきた。

   ◇   ◇   ◇

三塁に勢いよく滑り込んだ柳田は、息を切らしながら笑顔を見せた。同点の6回無死一塁。オリックス山本の甘く入ったカットボールを強引に右中間に運んだ。今季初三塁打で一塁からグラシアルが生還し、これが決勝点に。「いいピッチャーから打てて良かった。(適時三塁打は)たまたまです」。首位西武に1ゲーム差に再び迫る白星を「4番柳田」がもたらした。

デスパイネの不調もあり、8月30日西武戦以来、今季3度目の4番だった。初回は1死二塁で右前へ自身11試合ぶりの適時打。4回にも先頭で中前打を放った。V打を合わせて3安打は戦列復帰後初で、3月31日西武戦以来だ。9月の月間打率は前日まで2割ちょうどと苦しんでいたが、シーズン最終盤で輝きを取り戻してきた。

19日の試合前に突然髪を切った。無造作に伸びたパーマスタイルから、両サイドを短く切ったスッキリとしたものに変身した。「子どもを幼稚園に送りに行ったら、知らない子から『その髪、どないしたと?』って言われたんよ」。何げない言葉で髪が伸びていたことに気がつき、その足で美容院に向かった。

不調の間は「そういう(調子が悪い)ときもあるやろうな、と思っていた。チームがなかなか波に乗れない責任は感じるけど、それを感じても結果は変わらない」と悩みすぎることはなかった。選手や首脳陣、OB、スタッフ…。見知らぬ幼稚園児の言葉にも聞く耳を持つスラッガーは、多くの人との会話をヒントに、練習では気軽にいろいろ試す姿があった。

チームは23日に再奪首と優勝マジック再点灯の可能性がある。工藤監督は「どっちかが決まるまでは、最後まであきらめない。ぼくらは勝つしかない」と力を込めた。柳田も「あと4つ、勝ちます」と同じ思い。奇跡の逆転優勝へ、何より主砲復活が心強い。【山本大地】

◆ソフトバンクのグラシアルが貴重な追加点を奪った。7回2死二塁で内角低めの直球を仕留め、27号2ラン。「厳しいコースだったが完璧に捉えられた」。3戦13打席ぶりの安打となる1発にニッコリ。初回は1点先制し、なおも無死一塁で一塁に犠打。柳田の適時打につなげた打席を「チームのためにバントをした。意味のある勝利になったと思う」とサラリと振り返った。