ソフトバンク甲斐拓也捕手(27)が11日、野村克也さんの訃報を残念がった。宮崎春季キャンプで朝のウオーミングアップ中に知らせを聞き「びっくりしました」。高校時代から著書を読むなど捕手として尊敬する存在の死に触れ、神妙な顔になった。

初めての出会いは17年春。「『似てるね』というお話をしていただいたことを覚えています」。ともに母子家庭。テスト生から大捕手になった野村氏のように、育成入団から侍ジャパンに入るまで成長した境遇を重ね、気にかけてもらってきた。「最後にお会いしたのは去年の春ですかね。『母ちゃんを大事にしなさいよ』と言われたことを今でも覚えています」。記憶をたどりながら、目にはこみ上げるものがあった。

野村氏の教えで心に残っていることがある。「ピッチャーを支える存在になりなさい、と。『功は人に譲れ』という言葉を教えていただいた。あらためて、そういうポジションだと思った。その言葉を大事にして、取り組んできました」。捕手は陰の存在として、投手を盛り立てる役割であること。その信条を胸に刻んでいる。

野村氏から「着けてほしい」と直接言われたこともあり、今季から野村氏が背負った背番号「19」に変更したばかりだった。「できれば19番のユニホーム姿を見てもらいたかったし、見せたかった。もう見せられないと思うとさみしいです。この19番を着けさせてもらえることになったので、頑張っていかないといけない。いい姿を見せられるように頑張っていきたい」。直接見せる思いはかなわなかったが、天まで届くように。これからその背中を輝かせていく。【山本大地】