ロッテの場内アナウンス担当・谷保恵美さん(54)が日刊スポーツのインタビューに応じた。コロナ禍で未知のことも多かったという自身30年目のシーズンを振り返った。今回は前編。【聞き手=金子真仁】

-30年目のシーズンはいかがでしたか?

谷保さん 今年ならではなんでしょうけれど、お客様がいない時期もあって、いらしてからもお声も出せないという応援スタイルが初めてだったじゃないですか? どうなるのかなと思ったんですけど、手拍子がリズムで来るのを肌ですごく感じて、声で応援してくれているかのような感じがしたのが、新しい発見でしたね。いつも応援の声というよりは、応援の雰囲気全体を聞きながらアナウンスをしているので。

-誰もいない開幕戦をどう感じましたか?

谷保さん オープン戦から誰もいない状況での開幕でした。選手の皆さんはもちろん、オープン戦と公式戦の違いがあったと思いますけど、私の仕事としては「始まった感」があまりなかったです。

-無観客のアナウンスではどんな意識を?

谷保さん テレビやネット中継を通じて楽しみにされていらしたと思うので、私にできることは声を出すことだけ。とりあえず元気な声を出していこうと。それだけでしたね。

-7月10日に有観客になりました

谷保さん そうなんですよ。今年を振り返ると、あの日がすごく一番記憶に残っていて。7月10日が。事務所から出て、球場に来る前での間に、ユニホームを着たファンの方々を見たときは、本当に何とも言えない感激というか。これがプロ野球の球場だと。戻ってきたなーと、すごく感激しました。ファンの方々にも「来ましたよ~」って声をかけていただいて。

-試合前に「おかえりなさい」のアナウンスもありました

谷保さん 何かメッセージを出そうかという話に広報室でなりまして。おかえりなさい、と伝えたつもりが、お客様のすごい拍手がワァーってあったので。こっちに「おかえりなさい」が戻ってきたというか。言った私に戻ってきて、すごく感激しましたね。

-シーズン終盤を前に「マリンで逆転優勝」の可能性もありました

谷保さん そうですよね。放送室の中でも、みんなでそういう話になって、みんなでワクワクしました。どんな演出をしようか、なんて話してて。そんな思いをさせてもらってうれしかったですね。

-ロッテから移籍した選手をアナウンスする機会もありますが?

谷保さん 移籍した選手は、もちろん思い入れがすごくあります。でも別の選手との差が出るのは絶対にだめなので、気持ちの中だけで力が入ってます。声には出ないんですけど。

-沢村ら途中加入の選手のアナウンス練習は?

谷保さん ほとんどぶっつけ本番でしたね。登場曲の雰囲気を見ながら。沢村選手は壮大な曲なので、どこでアナウンスをしようか、音響担当と打ち合わせていました。これは曲が先に入った方がかっこいいなと。アナウンスは曲の後に。益田投手とかも後派です。通常の野手の打席も曲出し(=曲が先で、その後にアナウンス)ですが、藤原選手の曲はしっとりした感じなので、アナウンスが先です。(後編へつづく)

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