“得点圏の鬼”が暗雲を振り払った。楽天山崎剛内野手(25)が20日、オリックス24回戦(京セラドーム大阪)で決勝の逆転2点適時打を放った。9月からスタメンに定着。得点圏打率は3割5分3厘を誇り、レギュラー取りへの好機を着実にものにしている。チームは前夜に優勝の可能性が完全消滅。下克上への再スタートを勝利し、3連敗でストップ。試合のない21日に4位ソフトバンクが敗れると、2年ぶりのCS進出が決まる。

   ◇   ◇   ◇

「落ちてくれ!」。無心でバットを振った山崎剛が、白球に祈った。1点を追う7回2死二、三塁。富山の内角高め速球に詰まった。決して強くはない打球が、飛びつく三塁手の頭を越え、左前へ落ちた。何とか得点がほしい場面で、値千金の逆転打。「もう何も考えずに打つだけだと思っていきました。最近全然打てなかったので、ほっとしています」と言葉に素直な気持ちを込めた。

地位を固めつつある。9月4日西武戦で2カ月ぶりのスタメン出場を果たし、第1打席で適時打をマーク。同戦からこの日まで主に遊撃手で36試合連続でスタメン出場中。得点圏打率は3割5分3厘を誇り、打ってほしいところで確実に結果を出している。打席に入る前は2本のバットを持って素振りをし、フォームのバランスを整える。「今までやってきたことがちょっとずつできていると思います」と手応えも感じている。

石井GM兼監督は、4年目の台頭に期待を膨らませる。「2ストライクから何とかしようという結果がああいうヒットになった。彼が今年挙げた22打点は、来年レギュラーになるためにいい経験の数字。これからも(スタメンを)譲らないという姿勢を出して、常に前のめりで頑張ってくれれば」。昨季から正遊撃手に定着していた2年目小深田らとも切磋琢磨(せっさたくま)し、すくすくと芽を伸ばしている。

前夜に8年ぶりのリーグ優勝の可能性が完全消滅した。3位からの大逆転日本一へのリスタートを切る一戦で、山崎剛がバットで勝利をもぎとった。「1つでも上の目の前の試合を勝てるように、それだけです」。勝ちたい。素直な思いをバットに、白球に込め続ける。【桑原幹久】